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なんでもアラン屋  作者: 如月夜
日常
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1話 なんでもアラン屋

 様々な花々が咲き乱れるリュルム王国の春。  

 花筏を横目に見ながら走る。

 親から渡された地図を握りしめながら駈けていく。

 よく綺麗だと褒められる緑髪、それが汗でおでこに張り付いて鬱陶しい。

 舞い散る花が顔につく。

 振り払おうとすらしない。

 整然と整ったサクラ並木を見る余裕すらない。

「ぜぇ……ぜぇ…… 足がもう動かないよ」

 家に帰ったら突然、地図の場所に手紙届けてきて!って言われるし、そんなことより花壇の世話がしたい、授業で持ち帰った花がそろそろ咲くのに。

 悪態を付きながら僕は年季が入ってる建物を見つけた。

 そこには、なんでもアラン屋と書かれ、主人かな?

むすっとした顔付きの男性が木板にチョークで描かれている。しかもそれは傾いて取り付けられていた。

「ここか……はぁ、はぁ……」

 先生の教えを思い出す。身嗜みは大事だ、手櫛で髪、深呼吸して息を整えてからノックする。コンコン、木の堅く乾いた音が響く。

「――お入りください」

 低く落ち着いてる声だ、けれどあどけなさが残ってつい聞き惚れてしまった。

 惚けてる頭をぶんぶんと、振り建物の中に入っていく。

 目に入ったのは、木製4人掛けテーブル、食器棚、背の高い本棚、その横には細剣と埃が被った槍も置いてある 後は奥の扉だろうか。その時、先程の声が耳に入ってきた。

「…………いらっしゃいませ、なんでもやれと言われたら、できないものもある。がモットー」

「なんでもアラン屋にようこそ、少年! なにか依頼かな」

 黒のロングスカートにシャツを羽織り、花が彩られたネックレスを付け、輝く銀髪を肩まで伸ばし、無機質な瞳で僕を見やる綺麗な女性。

 ベストにジャケットを羽織った、焦げ茶色で短髪の背が高い筋肉質な男性。

 ――そんな2人が出てきたのだった。


「依頼なら話は聴こう。テーブルに座ってくれたまえ」

 ――2人で住んでいるのかな、親子には見えないな。

 自分が失礼な想像をしてる事に気が付き、慌てて椅子に音を立てて座り込んだ。

「ふむ、飲み物はいるかね? 珈琲と紅茶しかないのだが……」

 珈琲と紅茶は苦手だ。アラン?さんには申し訳ないがそう言って断ることにした。

「苦手なのか、また席を囲む時は別の飲物を用意しておくよ」

 茶目っ気たっぷりに微笑みを浮かべながら男は喋る。

 「それでは、挨拶といこう。俺はクラウディオ・アラン、ここなんでもアラン屋を営んでる元冒険者だ」

「そして、横にいるのが手伝いをしてくれてるクー・オルテンシア」

「よろしく」

 何回聴いても惚けてしまう声色。だが、僕には興味がないみたいで、挨拶したらすぐ眼を逸らされてしまった。

「え、えっと…… 親に言われて!」

 ――緊張で頭が真っ白 なにを言えばいいのか。なんとか声を張り上げながら封筒をアランさんに渡し、そう切り出す。

 瞬間、アランさんが手を突きだし、喋るのを静止した。

「おっと、話しを止めて申し訳ない。その前に言いたいことがあってね、先程入った時奥の扉が気になったかい?」

「は、はい……」

 失礼な想像がバレて、怒られるのだろうか。僕は目の前の鍛えてある肉体に眼を向けた。

 ――この人に殴られたらかなり痛いぞ。身が縮み上がる。

「まてまて、怯えているが取って食ったりしないよ。安心してくれ」

 ニカッと笑いながら話しを続ける。

「俺達は一応、親子でね。あの扉は私の寝室だよ。」

「……余計なことを言わなくていいのに」

「は、はい 申し訳ないです」

「なに、別に怒る気なんて毛頭ないよ。 君が緊張してたから和らげようと思って。疑問に感じていそうな事を答えてみただけなんだが…… 逆効果だったかな」

「…………来たときより縮み上がっている。慣れない事はしないほうがいい、どう見ても逆効果だ」

 アランさんは苦笑いを浮かべながら、髭を触り誤魔化していた。

「さ、さて本題に入ろう。この手紙を俺に届けるよう頼まれたのかい?」

 僕は頷く。

「では開けさせてもらうよ、どれ」

 おそるおそる、アランさんの様子を観察する。

 ゴツゴツとした指を器用に使って、手紙を開ける。

 鋭い眼差しで、左右に文章を読んでいく。いったいなにが書いてるんだろう、でも関係のないことだ。

 これで家に帰ったらゆっくり休める。そうだ、花壇の手入れでもしよう、そろそろ咲いてきてるんだ。

「アラン、内容は?」

 クーが考え込んでるアランに聴く。

 皆に見えるよう、そっと便箋を机の上に置いた。

 僕とクーさんは内容を確かめるため、身を乗り上げ文章を読む。



 Dearクラウディオ・アラン。

 依頼をお願いします。

 マキオと共に郊外に出て、薬草を25束集めてきてほしいのです。そろそろ薬草集めをしても良い年頃なのですが、1人で行かせるのはとても心配です。是非とも付き添いと自生している環境など、教えていただけますか。

 報酬は手紙と一緒に同封してある銀貨5枚と銅貨7枚です。内容との相場が分からず、このような報酬になってしまい、申し訳ありません。

 マキオの母、サッチャー。



 読み終えたクーさんが、首を傾げながら聴く。

「……報酬は妥当?」

「妥当ではない。少し安いがこういう種を撒いておく仕事も大切さ。受けるとしよう」

「僕も行くの!?」

 驚いた。行く事になるとは思っていなかった、しかも郊外だ。家に帰って花壇の世話ができるのはいつになるのか…… 驚きが落ち着くと、だるさと嫌気が沸き上がってくる。

 露骨に嫌な顔が浮かんでたのだろう。アランさんに諭されてしまう。

「サッチャーさんも、マキオ君に経験を積んで欲しいのさ、君達の年代の子達は、手伝いとしてよくやるものだ。私も若い頃やったものだよ。」

 文面を改めて読むと、僕に対して心配をしているお母さんの顔が浮かんでくる。少し切ない。

「クー、薬草を集めるのはいいが左手が使えない以上、収穫は任せていいか? その分俺はマキオ君に、元冒険者としてレクチャーするよ」

「ん…… 大丈夫。任せて」

 その発言を聞き、僕はアランさんの、左手をちらっと見ると艶めいた黒の革手袋にしか見えない。気づかれたようで、目線が合ってしまった。

「気になるかな? 昔ヘマをした時にキングスライムの液がかかってね、神経に傷がついてしまったんだよ」

 それを隠すために手袋を嵌めていてね」

 少し暗い顔をしながら話すアランさん。

「こ、こちらこそ不躾に見てしまってすみません!!」

 きょとんとした顔を浮かべた後に柔らかな笑みを浮かべる。

「君は不躾じゃないよ。礼節を知っている、とても良い子だ」

「さて、お互い準備するものがあるだろう。一時間後に正門前集合でいいかな」

「り、了解です!」

「わかった」

「その手筈でお願いするとしよう」




 とても緊張しています。

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