02:感情豊かな少女は、泣けない
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「王宮、でけぇ……」
村から鳥型バケモノで移動して数時間。
着いたのは、いかにも“異世界王国!”って感じの白と青の城だった。
「800年ぶりの涙持ち」とか騒がれて、王宮に連れてこられた俺。
チートはないけど、注目度だけはぶっ壊れてる。
俺の涙……いったい何なんだ。
「ナキマクリン様、お通しします」
「第一王女、ルイ・ナケネーナ様が……お待ちです」
扉が開いた瞬間——そこにいたのは、
あの時、俺の涙をじっと見つめていた“泣けない子”だった。
「久しぶり……ね」
「いや、数時間ぶりじゃない?」
そう言ったつもりが、彼女の表情は動かない。
透き通る銀髪、氷のような瞳。
でも、その奥に……なにか、ずっと凍りついたものが見えた。
「私の涙は……王国の崩壊を招く“引き金”と信じられてるの」
「だから、私は“泣けない”ように……王の命で封印された」
重すぎんだろ……その呪い。
「ナキマクリン、お願いがあるの」
「私の代わりに、旅に出て。神涙石を探してほしい」
彼女の声は静かだった。でも、胸の奥から、絞り出すように響いた。
「ふぅ〜〜ん、それってつまり……」
突然、声が割り込んできた。
「“王女には泣かせられないから”、わたしが代わりに泣き係ってこと?」
パチンと響く足音。
カツカツと歩いてきたのは——
明るいオーラ全開の少女だった。
「はじめましてっ! ナケネーナ姉さまの……従姉妹の、ルイ・ティアノーンですっ!」
俺は一瞬、目を見張った。
髪は淡い栗色、瞳は琥珀色。
王女とは正反対の、感情豊かな表情。笑顔、笑顔、笑顔。
なのに……なんでだろう。
一瞬だけ、目が合った時——その奥に、
“何かが泣いてる”気がした。
「わたしね〜、旅に出たかったんだよねぇ!」
「ナッキー(!?)が泣いてるの、隣で見たいなーって♪」
ナッキー呼ばわりされるのは想定外だった。
「え、てか君、泣けないの? めっちゃ感情豊かじゃん」
「うん。でも涙はね、出ないの。
……どれだけ悲しくても、悔しくても。
だから、ちょっとズルいよね? ナッキー」
ニコッと笑う。けど、その笑顔は……ちょっとだけ、痛かった。
「ナケネーナ姫さま。旅は、私に任せてください」
「この泣き虫……じゃなかった、ナキマクリンさんと一緒に、神涙石探してきますっ」
「……ありがとう、ティア。お願いね」
その瞬間、ふたりの目が合った。
お互い、言葉じゃない何かを交わしてる気がした。
俺だけ、会話の外側にいた気がして、ちょっと焦った。
こうして——
王女ナケネーナは王国に残り、
俺と、ティアノーンの旅が始まった。
泣ける少年と、笑う少女。
そして、王国に残された、涙を封じた姫。
……これ、三角関係フラグじゃねぇか?!
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