第4話 「革命派の拠点にて②」
夜明け前、馬車はようやく目的地に到着した。ルシェリアが降り立ったのは、王都から離れた小さな村の外れにある石造りの屋敷だった。
「ここが革命派の拠点?」
「まぁ、一つのな」
ジークが軽く肩をすくめる。
屋敷の内部は思ったよりも整然としていた。長い廊下を進むと、広い部屋に案内される。大きな机を囲むように何人もの人物が集まっていた。
その中で、特に目立つ存在がいた。
金髪に深紅の瞳を持つ、十歳くらいの少年だ。腕を組み、ルシェリアを見下ろすようにしている。
「……ふーん。これが“処刑寸前の王女”?」
まるで品定めするかのような視線に、ルシェリアは思わず眉をひそめた。
「紹介するぜ」
レオンが少年の頭をくしゃっと撫でる。
「こいつはエリオ。頭は切れるし戦略立案もするが、いかんせん生意気でな」
「やめろ! 俺は子ども扱いされるのが嫌なんだよ!」
エリオはレオンの手を振り払ってルシェリアを見た。
「俺たちはアンタみたいな王族を信用してない。裏切るつもりなら、すぐに切り捨てるからな」
「……そう」
ルシェリアは笑みを浮かべた。
「信用してくれなくて構わないわ。でも、私はもう王族じゃない。何も持たない私が、あなたたちにとって利用価値があるかどうか——見極めてちょうだい」
少年の目がわずかに細められた。
「面白いこと言うじゃん。でも、俺は簡単には認めないからな」
エリオは鼻を鳴らし、背を向けた。
(生意気な子。でも、どこか……)
ルシェリアは、彼の後ろ姿を見つめながら、ぼんやりと考えていた。
(どこか、昔の私に似ている……)
彼がどんな過去を背負い、この場所にいるのか。
それはまだ分からない。
けれど、きっと彼もまた、戦う理由を持っているのだろう。
こうして、ルシェリアの新たな生活が始まった——。