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マーメイドテイル

 イントロが流れ、フォーメーションを組む。

 今日初めて人前で踊るから、不安もある。

 『シンクロ』を超えるほどのインパクトを残せるのか、それもわからない。


 だけど!


「それでは聞いてください! マーメイドテイルの新曲で『その人魚には見えない翼が生えている』!」


 人魚、というものを、私は知らなかった。お母さんに教えてもらい、半分魚なのだと知った。

 海の中に住み、空を知らない生き物。

 深い深い、海の底で、ひっそりと暮らす生き物。

 それはまるで、ずっと部屋に引き籠っていた昔の自分。


 人魚姫、というお話があるという。

 恋した人間を追って、地上に昇った人魚姫。

 けれど、想いが届くことはなく。

 愛を失った人魚姫は、愛する王子を殺すことができず、海の泡になるのだと。


 だけど私は消えない。

 私たちは、消えない。


 どこまでだって行ける。

 この背中に生えた、見えない翼で……

 行けるんだ!


 ——届け!


。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。


わかる?

わからない

この世のことわり

未来への道筋も


理由?

果てしない

この命の意味も

生きている理由さえ


自由という名のもとに

不自由を操るの

四方を壁に囲まれた

あの暗い毎日を


自由という名のもとに

不自由を楽しむの

遮るもの何もない

青い空抱きしめ


ここにいてもいいよ(ここにいればいいよ)

ここにいたらいいよ(ここにずっといてよ)

私の隣 君と手を取り


自由という名のもとに

不自由を操るの

私達は人魚

海を泳ぎながら


自由という名のもとに

不自由を楽しむの

その背中には

見えない翼がある


。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。


 歓声と、止まない拍手。そして笑顔!

 観客の顔を、ひとりひとり見つめる。

 届いた?

 届いたよね?


 ああ……、

 私は、乃亜。水城乃亜。


 マーメイドテイルというアイドルグループで歌い、踊る、一匹の人魚なのだ!


*****


「決まったよ~!」

 稽古場に走り込んできたのはかえで。


「うぉぉぉ!」

「やったね!」

「よかったぁぁ!」

 杏里、恵、私がかえでを抱き締める。彼女が手にしているのは、今度アメリカで開催されるダンス大会の出場を知らせる手紙。予選を、勝ち抜いたのである。


「ENDのリサさんも決まったんだ! 一緒に行くことになった」

 ホクホク顔で報告してくるかえでは、本当に幸せそうだった。

「そっかそっか、すごいね、偉いね、かえちゃん」

「あ、また乃亜ちゃんが泣く~」

「乃亜たん、泣きすぎだよぅ」

「だぁってぇ……」


 フェスは大成功をおさめ、私達マーメイドテイルは、国民的アイドル……にはほど遠いが、それなりに世間に周知してもらえることとなった。メンバーがバラバラと個々での活動をするため、各方面に宣伝しやすいこともある。


 私は連ドラをこなし、その演技が話題にもなった。感情の起伏が激しい役柄だったから、見せやすかっただけ。私自身はそう思っていた。世間的にも『無名アイドルの子にしては上手ね』くらいの話だろう、と。


 しかし、私を気に入ってくれたある監督さんから声が掛かり、映画の話が決まりそうなのだ。しかもメインキャストで! オーディション続行中である。


 杏里は写真集を発売。これが若い女子に大人気となり、ファッション誌の専属モデルが決まった。


 恵は既にメインパーソナリティーのラジオ番組を始めている。何故かお笑い芸人さんをゲストに招いた時のリスナーのウケがよく、もしかしたらお笑い界……バラエティーにも進出するのかもしれない。


 こうして、私……水城乃亜は、この世界でアイドルとしてがむしゃらに突き進んでいく毎日である。まだまだ未熟とはいえ、お芝居もとても楽しく、


『私の中の、私じゃない私』

 を探しながら、色々な人物を演じていきたいとも思っていた。


 マーメイドテイルは、きっと国民的アイドルになる。なれると信じてる。ううん、私が、そうさせてみせる!


 だからね。


 乃亜……ううん、今はきっと、リーシャよね。私の世界で、きっとあなたも頑張ってる。そっちの世界でも、あなたはきっとマーメイドテイルなんだと思う。義妹アイリーンを巻き込んで歌って踊ってるあなたを見た時に、思ったの。


 あなたなら、世界をひっくり返すことだって出来るんじゃないか、って。


 きっと、大変なことだって多いはず。

 それでも……、

 あなたはきっとへこたれない。


 だから、私も弱音なんか吐かない! 吐くもんですか!


 ねぇ、リーシャ(乃亜)

 私たち、きっと会うことは出来ないけれど、私はずっと、あなたのファンだよ。そして、マーメイドテイルのファンだよ。

 ずっとずっと、あなたは私の推しだよ。


 この、背に生えた見えない翼を広げて、飛び立とう。


 歌が、聞こえる――



*゜*・。.。・*゜*・。.。


愛なんて簡単な言葉で済ますには

あまりにも浅はかで物足りないよ

愛なんて曖昧な形のないものに

この想い委ねるのはなにかが違う


なんと言えばいいのか

伝える術がわからないんだ

どうしてもわかってほしい

好きでたまらないんだ(好きなんだ!)


なんと言えばいいのか

伝える術がわからないんだ

これからの毎日もずっと

そばにいて微笑んで……(ここにいて!)


愛なんて簡単な言葉で済ますには

あまりにも浅はかで物足りないよ

愛なんて曖昧な形のないものに

この想い委ねるのはなにかが違う


それでも伝えたくて、届けたくて

この心、歌に乗せ君に送るよ

これは不器用な僕からの愛のうた

君を思って止まない僕からの愛のうた


*゜*・。.。・*゜*・。.。



~FIN~


最後までお付き合いいただきありがとうございました!

是非、本編『国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件』もお楽しみいただければ幸いです!

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