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天の声オネエと悪役令嬢の明るい未来改革  作者: 染井Ichica
天の声オネエと悪役令嬢の明るい未来改革
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アタシにいい考えがあるわっ!

 全部思い出した。

 あの時、既にアレクサンダーはアズリアに魅了されていた。だから当時のルーナを冷遇するのをおかしいとさえ思わなかったのだ。

 既にあの乙女の姿は目の前から消えている。動き出した時間。ルーナは即座に駆け出した。出口ではなく、自分と同じ姿に化けた少女の方へ。


「ごめんあそばせ!」


 地面を蹴り割った時の要領で練り上げた魔力で蹴り飛ばす。護身術程度の嗜みしかないものの、勢いをつけたおかげか、うまく筋肉の少ない柔らかいお腹に蹴りが当たった。カオルは痛みに目を見開き、そのまま気絶する。意識を失ったせいか、その姿はみるみるうちに本来の姿に戻っていく。そのまま崩れていく体を抱き寄せ、ルーナは走る。


〈えっ、ちょっ、まっ……!?〉

「殿下でもできたんだから私なら平気です……!」


 そして窓を蹴り破る。細かいガラス片がキラキラと陽光に煌めいて見えるのが、やけに綺麗に思えた。完全な魔力切れで鉄壁が消えるのが分かる。干渉するようになった風が縦ロールにしている銀色の髪をぐしゃぐしゃにするのが分かる。空中に飛び出したルーナは落ちゆく中、唖然としているアズリアを見上げて笑った。


「アズリア殿下、お先に失礼しますわ」

〈アンタって、ホントに馬鹿じゃないのおおおぉ!? 死ぬわよっ!?〉


 さて、ここは六階だ。いくらルーナが努力したとはいえ、足の骨は折れる覚悟をするべきか。と、その時だった。


「ルーナ! 俺を信じろ!」


 下から大きな声がした。


「ブレイク様!?」

〈き、来たわー!!キマシタワー!! エンダーだわー!!〉


 エンダーってなんだろう、と思いつつも落下は止まらない。よく見れば近くにはアレクサンダーやミアの姿もあった。


「大丈夫です! 怪我なら私が治します! だからルーナ様をどうか!」


 ブレイクの足が地面を蹴る。そして。


「捕まえたぞ!」


 大切なものにするかのように抱き止められる。ルーナの胸がバクバクするのが分かった。オネエの歓声がうるさいがそれを上回る心臓の音だ。命知らずの大ダイブをしたからかと思うがどうやらそうでは無さそうだ。だがこのままではブレイクも怪我をしてしまう。


「ーー貴様等は馬鹿か!」


 急に誰かに首根っこを掴まれた。そして体が風を切る。数秒後、三人は近くの屋上に下ろされていた。怪我も何も無い安全な着陸。それはブレイクも予想外だったらしくルーナを抱き寄せたまま目を白黒させている。


「三角関係からの駆け落ちのための飛び降りとか学生が考えるんじゃないっ!」

〈えっ……いや、そこで、なんでアンタが出しゃばるの〉


 そう、目の前で怒り狂っているのはオネエが以前工作員だと言っていた教師、ゾイド・フリューゲルだった。


◆ ◆ ◆


「なんてことだ……勘違いが甚だしい……」


 ルーナの説明にフリューゲルが自己嫌悪と情報量の多さに頭を抱えた。

 場所を変えて医務室。校医に人払いを頼み、部外者が入ってこなくなった場で一同は状況を整理していた。気絶したままのヒカルはベッドで眠らされている。


「そういえばガイアは? 見当たりませんが」

「現在アズリア殿下の近くで潜入してます。万が一の時はオネエさんにタイミングを教えて貰って救助する予定でした」


 答えたのはミアだ。安心したのか、顔がだらしなくなっていた。


「……待ってください、何故ガイアがオネエサンのことを」


 彼はオネエのことを知らないはずだ。未来から来たアレクサンダー暗殺を目論む彼を、アレクサンダーが自身が警戒していたから。


「私が話したからだ。ルーナに何かあったらと思ったらあの執事に暗殺をされることなどどうでもよくなった」


 少しだけ意外だった。


〈あら……なんかしおらしいわね……〉


 だが、気持ちが悪い、と毒を吐くのはいつも通りだった。


「それにしてもこの場の全員、魅了を克服してるとは思いませんでしたよぉ」


 びっくりー、と目を丸くしているのはリズだ。よく見れば彼女は制服では無かった。どこか遠いところに行っていたかのような旅装だ。


「おかげで【無効化】使わなくてすみました。あれ、制御難しいんですよねぇ」

「【無効化】……? あの、リズの魔法は【植物活性化】では?」


 少なくとも授業では毎回植木鉢に向かって伸びろー、と魔力を注いでいた記憶がある。不思議に思ってルーナが首を傾げると、リズの表情に焦りが走る。どうやら話してはいけないことだったようだ。それを見兼ねたのか、ゾイドが話を変えた。


「これからのアズリア殿下の処遇だが……数日以内には正常化させたレニアから除籍命令が下るはずだ」

「当然だ。既に我が国に実害が出ている。侵略ととられても文句は言えんぞ」


 アレクサンダーはすっかり怒り心頭だ。無理も無い。先日見てわかった通り、王宮の機能に支障をきたしている。仮にも国の中枢だというのに。国のトップとして抗議するつもりなのだろう。ルーナはカオルが眠るベッドを見る。そして胸が痛くなった。


「殿下、彼女もまたアズリア殿下の被害者なのです。助ける方法はございませんか?」


 心当たりはなくもない。だが、あの三人がルーナのお願いを受け入れてくれるとは思えなかった。アレクサンダーがうーん、と唸り始める。と、不意にオネエが声を上げた。


〈アタシにいい考えがあるわっ!〉

この度、この小説とは別作品なのですが、一迅社様よりコミカライズ化が決定しました!!


「悪役令嬢が婚約破棄されたので、いまから俺が幸せにします。 アンソロジーコミック」2

発売日:2023/7/31

※「悪役令嬢の約束~婚約破棄?いいえ五年越しのプロポーズです」がコミカライズされる作品です。


こちらもあわせてどうぞよろしくお願いします。

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