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「ーーはーい!」


 扉を開けて入ってきたのは双子のように雰囲気が似ているスラリとした長身の男女。特に白い制服を纏った女性の方は何故か目がやたらと目がキラキラしていた。女性なのに王子様という形容が似合う凛々しい女性だった。すらりとしていて男装の麗人という言葉が良く似合う。


「ばっちりくっきり委細承知です! 痛いのは嫌ですよね! 分かります! そんな貴女に乙女の嗜み、【鉄壁】をプレゼントです!」

「おい、待て、落ち着け。ちゃんと説明しろ」


 そんな彼女を見兼ねたのか、呆れ顔で制するのはもう片方の黒い制服の青年だ。こちらは逆に整いながらもどこか儚げな顔立ちをしている。一度聞いたら耳に残るような透明感のある声が印象的だった。


「アンタは今から全てを忘れて過去に戻る。そのまま人生をやり直すんだ。ただ、その魔法は変質する。分かりやすく言うと、自己治癒でなく、魔法障壁になる。ここを出たら自動的にその魔法は変質する。選択権は無い。すまない。ただそれにより、未来は変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。とはいえ、折角ならよりよい未来のために頑張ってほしい」

「……もう一度、やり直せと? あの、苦しくて、辛い時間を?」


 申し訳なさそうに青年が告げたのは自分にとって拷問に等しい内容だった。自分が婚約破棄の後受けた仕打ちが次々と脳裏に蘇る。どれも辛くて痛くて惨めで悲しかった。絶望して頭を抱え込んでしまった自分に対し、乙女は少し考え込み、そして薄く笑った。


「しょうがないわね。あのお馬鹿さんにももう一度チャンスをあげようかしら。つまり貴女は一人じゃなくて、二人で未来を変えていくの。これなら成功率は上がると思うわ」

「お馬鹿さん……?」


 一体誰だろう。私が知っている人だろうか。すると白い制服の女性は苦虫を噛み潰したような顔になった。


「えっ……チャンスなんているんですか? 彼、今の方が生き生きしてるじゃないですか。毒親がいる王宮よりあっちの方が合ってたんですよ、きっと」

「それとこれとは別よ、トトリ」


 どうやらこの女性の名前はトトリというらしい。


「それにあの男の力を借りるのはルーナのためよ。分かったわね? もう片方のトトリ、上手くやっておきなさい」


 どうやら彼の名もトトリらしい。苗字なのだろうか。


「はいはい、お嬢はいつだって無茶を振る……まぁいい。汚れ仕事は俺の専門だ」

「トトリ、オネエ様方からも人気ですもんねぇ……可愛い食べちゃいたいって。そういえばこの前某掲示板で受けスレ、ついに二桁いったとか。ちゃんと彼女いるのにご愁傷様でーす」


 女性が対の男性を横目で見ながらぷくくと笑うと、彼の目が死んだ。


「こら、二人ともじゃれているんじゃないの。ルーナ・セレスティア。貴女は蘇る。自分の死の原因を知り、未来を変えなさい。それがなされない場合は私は世界を滅ぼすわよ。あの王女の魅了は他の世界にまで悪影響を及ぼすもの」


 何より善良なるものが無碍に虐げられる世界は一度更地にしたくなるの、と邪悪に乙女は笑う。


「これが契約よ。無気力なものを裁いても面白くないもの。精々私達を楽しませなさい。では、よき未来改変を」


 薄れゆく意識。

 きっと私はこの事を忘れてしまうのかもしれない。

 それでも。


「ありがとう、ございました!!」


 最後の意識でそう叫べば、三人は少しだけ驚いたように目を見開き、そして綺麗な笑顔を浮かべたのが分かった。


次回から現在に戻ります

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