男子禁制の女子会と決め込むわよぉ!
やることができた、といい笑顔を浮かべて、お茶会の途中にも関わらず甘味を未練がましく見ているブレイクを引きずりどこかへ行ってしまったアレクサンダー。二人が去った後、ルーナは一気に押し寄せてきた疲労感に深く溜息をついた。
〈なんというか嵐のように去っていったわねぇ……子兎ちゃん、お疲れ様よぉ〉
と、ルーナは他の二人がどこかソワソワしていることに気付く。その瞳は好奇心で煌めいていた。
「ルーナ様、その」
「オネエサンについてもっと知りたいです!」
〈は? アタシ? どうしてよ〉
そんな二人のお願いに対してサンは少しだけ嫌そうにしていたが、そこに悪感情が一切ないと分かったのか、うぅ、等と唸っていたものの、すぐに切り替えたようだ。
〈……しょうがないわねぇ。やってやろうじゃない! お嬢様方! ティーカップはお持ちになられて!? お菓子の準備はいいかしら!?〉
テンション高くオネエが問いかける。そして。
〈男子禁制の女子会と決め込むわよぉ!〉
茶会の開始を宣言する。ちなみに、飲み会のようなノリではあるが一滴もアルコールは入っていない。
◇ ◇ ◇
「えっ、じゃあやっぱり鉛入りのおしろいはよくないんですね!」
〈そんなの美容に一番ダメよぉ! 肌の白さをキープしたいのなら素直に果物食べておきなさい! あっ、でも柑橘類は注意よ。ベリー、ベリー系にしておきなさぁい!〉
リズとサンの美容トークが始まって一時間。ルーナは静かに二人の話を聞いていた。サンのアドバイスで温くなった紅茶に装飾用に盛り付けてあったミントや苺、りんごなどを入れて作ったフルーツティーは紅茶の味を控えめながらも果汁でまろやかにしてくれて旨味が増したように思える。これはまた飲みたい。ミアも気に入ったらしく、既に何杯もおかわりしている。
「ところでぇ、オネエサンはそんな素晴らしい豆知識、どこで手に入れたんですかー?」
〈どこで、ってそりゃあ美容雑……あっぶな、本当にアンタ上手いわね。本当に油断も隙もないわぁ。流石、未来の辣腕女商人リズ・グリニッジ〉
口が滑らかになったところでオネエの正体を探るような質問をリズはさり気なく挟んで挑みかかっていく。そしてサンもまた、そんなリズに翻弄されつつもしっかりガードを固めている。目の前で繰り広げられる高度な駆け引きは茶会の経験値が少ないルーナからすると興味深い。純粋に参考になる。すると五回目の話術トラップを防がれたリズは拗ねたように頬を膨らませた。
「手強いですねぇ……そもそもなんでそんなに秘密主義なんですか? ケチ」
〈はぁー!? アンタ、アタシのことをケチって言ったのかしらぁ!? オンナは秘密がある方が美しく見えるって知らないのかしらぁー!?〉
リズの言葉に反応するサン。だが、リズはふん、と鼻を鳴らした。
「なぁにがオンナですか。オネエサン、貴方、男性でしょう」
「っ!?」
聞き捨てならない言葉を聞いた。ルーナは思わず飲みかけていた紅茶を噴きかけた。喉にブルーベリーが詰まるのがわかる。無理矢理飲み込むがやはり噎せた。
〈待ちなさい、リズ・グリニッジ、どうしてそれを〉
「私達グリニッジはルーナ様と違って比較的最新の異世界情報を握っています。だからオネエという言葉の意味も分かりますよっ」
オネエとはお姉さんのことではなかったらしい。つまり、ルーナは婚約者でもない男性であるサンに寝姿や寝起き顔を無防備に晒していたということで。顔が燃えるように熱い。俯いたルーナを心配するようにミアが背中を撫でる。
「ば……」
〈ん? 子兎ちゃん、何よぉ〉
「馬鹿ぁっ! オネエサン、酷いですわっ! 淑女の無防備な姿を、ぬ、盗み見するなんて!」
本気で怒ったルーナにオネエサンは気まずそうに黙り込んだ。




