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ここまで最低なプロポーズは前代未聞よ

 アレクサンダーの魔法について知らされた面々の反応は様々だった。


「で、で、殿下ー! 私、ただの商人の小娘なのですが!」

「えっとぉ、これ、私も側近入り確定ってことですか? 高位貴族じゃないのにぃ!」


 庶民的美少女二人は抗議するように声を上げる。そして。


〈そうよそうよ! あんた、本当に何考えてるのよぉ! このお馬鹿さんがぁ!〉

「君に馬鹿呼ばわりされる筋合いは無いんだよね」


 オネエの言葉にアレクサンダーは顔を顰める。


〈……ゲェ、本当に聞こえてるのねアンタ〉

「わっ、知らない人の声が!?」


 ブレイクはオネエの声に目を白黒させている。誤魔化しきれないと判断したのだろう、オネエの深い溜息が聞こえてくる。そして。


〈……仕方ないわね。アタシはオネエのサン。アンタ達の未来を知っている者よ。そこの馬鹿王子が未来で引き起こす、ルーナ・セレスティア嬢の処刑がきっかけになる大虐殺を止めるため、アタシは未来を変えようとしている〉


 それは今まで一番真面目なトーンだった。大虐殺を引き起こす、と宣告されたアレクサンダーは笑みを浮かべることなく、目を細めて黙り込んでいる。


〈この様子なら多分アレクサンダーは大虐殺を起こして異世界送りにならないでしょうけれど……悪いわね、アタシ、アンタのことだけは信用出来ないの〉

「……奇遇だな。私もだ。王族である私と同じ魔法を使える者など胡散臭くてね」


 一触即発の剣呑な空気が漂う。これはよくない。ルーナは慌てて口を開く。


「オネエサンと殿下は魔法以外も色々と似てますわね! そ、その……カレーが苦手なところとか!」


 まずい。言葉の選択を誤った。背筋を冷や汗が伝う。そもそも自分がオネエの存在を隠していたのも問題だ。機密情報を外部に漏らしていたのでは、などと咎められても何も言えない。だが、内心動揺し続けるルーナの予想に反して、アレクサンダーは何かに気付いたかのように目を見開き、そしてうんざりしたように溜息をつく。


「……そういうことか」

〈何よ、この馬鹿王子。なんか文句でもあんの?〉

「君の正体、なんとなく予想がついたけど彼女にバラされたくなかったら共闘しよう。君の持つ情報は今の私にとっても有益なのだから」


 だが、何故だろう、最悪の事態は回避出来たらしい。どういうことだ、と他の三人を見るが、彼等もアレクサンダーが譲歩した理由は分からないようだ。オネエは少しだけ呻いていたが、やがて渋々とアレクサンダーとの取引に応じた。


◇ ◇ ◇

 アレクサンダーが手始めにオネエに問いかけたのはとある機密文書の保存場所だった。うっ、とオネエは言葉を詰まらせたものの、やがて諦めたようにすぐにその場所を告げる。その答えにアレクサンダーは満面の笑みを浮かべた。どうやら彼のお眼鏡にかなったらしい。


「これで確認した場所に資料があれば、長年私が苦しめられてきた王宮の勢力図を塗り替えられる。友として持つべきものは賢者だな」

〈最悪……ピーマン野郎の手助けなんて、このオネエ、死んでもしたくなかったわぁ……〉


 一方のサンは絞め殺される鶏のような声でアレクサンダーへの恨み節を紡いでいた。余程耐えかねたらしい。


〈っていうかさぁ、子兎ちゃん、気付いてる? これで完全にアレクサンダーから逃げられなくなったわけだけど。外堀から埋められてるのよぉ〉


 そうだった。ルーナは凍りつく。ミアやリズの嘆きは他人事ではないのだ。というより曲がりなりにも婚約者なだけあって、彼女の方が実害が多いように思える。思わずアレクサンダーから一歩離れると、アレクサンダーがにっこりと一歩前へと歩みよる。


「ルーナ、未来を変えるために協力してくれないか? 具体的に言うと王国を蝕むダニ共を一緒に駆除しよう」

〈……ここまで最低なプロポーズは前代未聞よ〉


 辟易したようなオネエの感想に黙り込んでいたブレイクが力強く何度も頷いていた。

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