第四話 古フィナール書
「やはり私とお前は相容れぬようだな。」
「フィナール……君は神を裏切るのか? 創造主たる神を。大いなる叡智を。」
「ああ…私はこの事実をつかんだ瞬間から神へと疑念を抱いていた。まさか人が神のシナリオの中であのような役割を担わされているだけとはな。いい加減に目を覚ませ。リグロー。」
「だがそれが神の御心。神がそれを望むというのなら私はそれを拒絶しない。受け入れる。」
「いつまで甘えているのだ。貴様の役割はなんだ? 真実を後世へ伝えることだろ。」
「そのためにこの本を……」
「お前はそれを後世へ伝えろ。大いなる預言者フィナールは神の裁きを受ける覚悟で真実を掴み書物に書き残したと……古フィナール書を。」
そのあとには永遠にも感じれる静寂が続いた。
リグローと呼ばれた男は永久の寂寞に取り残された感覚に襲われた。
人々の声が男には聞こえた。
悲しみすすり泣く声。喜び笑う声。怒り狂う声…………
「夢か……あれから何年経ったのだろうか……。フィナール、君の言ったとおりあの書物は人の目に触れるところへ保管した。だがあれは人には読めんぞ。読みたくてもな……」
壮年の男性が目覚めそう独り言を言った。
男性は暖炉に火を点け椅子に腰掛けた。
それから数十分経ったときだった。
突然何者かが木でできた扉をたたいた。
「リグローさん!!リグローさん開けてください!!」
「この声は……あの書物を隠しておいた図書館の……何かあったんだろうか。」
リグローは扉に手をかけた。
扉が開いてすぐに少年と少女が飛び込んできた。
よく見ると2人だけではない。気を失っているのかぐったりした様子の少年がいた。
「カイン君か。さあそこの少年をベッドに寝かしておやり。」
そう言われるとカインは気を失っている少年をベッドに寝かせた。
「なにか隠しているんじゃないかね? カイン君。」
「実は……」
カインはそれに続けてポルターガイスト現象や古フィナール書のことをリグローに告げた。
「やはり見つけたか。古フィナール書を。だがポルターガイスト現象の謎を解く鍵はそこには無い。真相を知りたければあの男の元へ行くことだ。あの科学者エブラー・ノアの下へ。」
「エブラー・ノア……」