帰宅
300字SS初挑戦です。
門番は困惑していた。じきに門が閉まるというのに住人が戻ってこない。見逃すはずなどないのだがと門を振り返っても、肩越しに広がる闇より深い闇に生けるものの気配はない。
遠くから小走りの足音が聞こえてきた。舗装のないむき出しの土を蹴る軽やかな足音。「ごめんごめん! 間に合ったよね!」帰ってきた少年は息を切らせながら門番の盆から蝋燭を取り、かすかな灯を頼りに門の中へと消えていった。
門番は安堵した。これで次の祭日までは門のそばを離れないですむ。帰ってこなくなった住人を回収するのはなかなかに骨の折れる仕事だから。
空になった盆を下げ、門扉をくぐる。門扉は音もなく閉じ、月明かりの下からすうっと消えた。




