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14-6

「そんなことよりも早く席についてよ。晩さん会の予定の時間が過ぎちゃったよ」


 クロノスに促され、俺たちはそれぞれの席についた。

 ナイトホークと呼ばれたローブの男は依然としてクロノスの背後に立っている。

 魂の宿っていない彫像のようにたたずんでいる。

 不気味だ。


 俺たちが席についてしばらくすると、メイドが蓄音機を作動させた。

 細長い部屋に弦楽器の上品な演奏が流れだす。

 続いて部屋の奥からメイドたちがワゴンの食事を載せてやってきた。

 俺たちの前に前菜が並ぶ。


「さあ、どうぞ。遠慮なく食べてよ。ああ、マナーとかは気にしなくていいからね」

「みなさん、食事に手を付けてはいけません。毒が盛られているかもしれません」

「毒? 冗談はよしてよ、姉さん」


 軽く笑いながら肩をすくめるクロノス。

 しかし俺たちはフォークとナイフにすら触れなかった。

 ……スセリを除いて。


「おお、なんとも美味じゃ! 白身魚のカルパッチョ! スープもタマネギの味が見事じゃのう」


 スセリはあっという間に前菜とスープを平らげてしまった。

 さすがは『稀代の魔術師』。こわいものなしだな……。

 これにはクロノスも面食らっていた。


 ディアが正面に座るクロノスをにらみつける。


「クロノス。いい加減本題に入りましょう。なにゆえわたくしたちをここに招いたのです」

「やれやれ。姉さんってば、食事も楽しめないとはね」


 パチンッ。

 クロノスが指を鳴らすと、メイドたちは俺たちの食事を下げだした。

 そしてグラスが並べられ、ぶどう酒が注がれた。

 クロノスがグラスをあおってぶどう酒を飲み干す。

 それからこう言った。


「単刀直入に言うよ。セオソフィーとフィロソフィーを僕に譲ってほしい」

「なんですって!?」


 ディアがイスを引いて立ち上がった。

 驚くのも無理はない。

 ガルディア家当主が代々受け継ぐ二つの宝珠。

 それらの譲渡を要求するということはつまり、自分をガルディア家の当主にしろと言っているに等しいのだから。


「姉さんがフィロソフィーを持ってるのは知ってるんだよ。僕の手下の情報によると、セオソフィーを盗んだセヴリーヌとも交流があるそうじゃないか。その気になれば二つとも用意できるんだろう?」


 その気になれば、どころか、ディアはすでに二つの宝珠を持っている。

 テーブルにもたれかかり、肘をついた格好でクロノスはニヤニヤしながら、ディアに手を差し伸べる。


「僕にちょうだいよ。二つの宝珠」

「セオソフィーもフィロソフィーも、あなたには決して渡しません」

「頑固だね。クローディア姉さん」

「ガルディア家の次期当主はこのわたくしです」


 ディアははっきりとそう宣言した。

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