2-1
緩やかな丘陵を越え、俺と半獣のメイドのプリシラ、そして銀髪の少女スセリはスピカの街へと到着した。
スピカの街は昼時ということもあって人で賑わっていた。
行き交う人々の合間を縫って俺たちは街を歩いていく。
「アッシュさま、どこへ行くのですか?」
「冒険者ギルドだ」
なにをするにしても、まずは冒険者ギルドに行き、冒険者として登録をしなければ。
冒険者ギルドでは大陸中にいる冒険者の管理をしており、旅の護衛や遺跡の探索、魔物の討伐など、人々から寄せられる依頼を斡旋している。
逆に言えば、冒険者ギルドに登録していない人間はならず者扱いというわけなのだ。
「わたしも冒険者になるのですか?」
「もちろんだ」
「わ、わぁ……。なんだかどきどきしてきましたっ」
プリシラは自分の胸に手を当てていた。
それから俺の横顔をちらりと盗み見てくる。
目が合うと、彼女はにこりと笑った。
つられて俺も笑ってしまった。
本当にかわいい子だな。
「さて、魔力も尽きてきたことだし、ワシは『オーレオール』に戻るとするかの」
気が付くとスセリの姿がうっすらと消えかかっていた。
「このようにワシは短い間しか実体化できんのじゃ。また会おうぞ」
スセリの姿が光の球体に変わると、魔書『オーレオール』の中に入っていった。
冒険者ギルドの施設内に俺とプリシラは入る。
右手にはテーブルがあり、冒険者であろう人たちが座っている。
左手には掲示板があり、様々な依頼が掲載されている。
そして正面には受付。
俺たちが受付へと進むと、そこに座っていた受付嬢が「ようこそ、冒険者ギルドへ」とにこやかにあいさつしてきた。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「冒険者登録を願いします」
「かしこまりました。こちらの用紙にご記入をお願いします」
俺とプリシラ、二人分の用紙を受け取る。
スセリの分は、まあ、いらないだろう。
俺たちはペンを借りて用紙に記入した。
用紙を受付嬢に返す。
「ありがとうございます。冒険者登録には少々時間がかかりますので、それまでしばらくお待ちください」
「よろしくおねがいしますっ」
ぺこりと頭を下げる、緊張したプリシラ。
受付嬢は「はい」とにこやかな笑顔で対応した。
暇を持て余した俺とプリシラは掲示板の前に立つ。
ぽかんと口を開けながら掲示板を見上げるプリシラ。
「行方不明者の捜索に、魔物退治、それと隣の街までの旅の護衛……。いろいろあるんですね」
「冒険者登録が済んだら、さっそく依頼を受けるぞ」
「はいっ。がんばりますっ」
プリシラはぎゅっと拳を握ってみせた。
と、そのときだった。正面の扉が勢いよく開き、一人の少女が入ってきたのは。
「アッシュ! ここにいましたのね!」