120-6
ある日、『シア荘』にて。
スセリは居間のソファーに寝転んで端末をいじっていた。
いつものごとくゲームで遊んでいる。
「アッシュよ。このゲーム、今でも定期的メンテナンスやアップデート、ランキングの更新が行われているのは知っておるな?」
「ああ」
彼女が遊んでいるゲームは他の端末の所持者と競い合ったり、ゲームの進行状況を保存したりする機能が備わっている。
「つまるところ、この世界のどこかに、古代文明から絶えずゲームサーバーを保守している人間がいるということじゃ」
「物好きな人間もいるもんだな」
「そやつがどこにいるのか、最近見当がついたのじゃよ」
「どこにいるんだ?」
するとスセリは天井を指さした。
「……空?」
「空よりももっと上じゃ」
空の上となると……。
「宇宙じゃ」
なんだか壮大な話になってきた。
「宇宙には今も旧人類が遺した無数の人工衛星や宇宙ステーションが漂っておる。そのひとつにゲームのサーバーがあり、リアルタイムでデータの送受信を行っておるのじゃ」
「ほ、本当か……?」
「推測じゃが、当たっておるとワシは思う。魔王ロッシュローブと人類の戦争によって世界が荒廃してもなお、娯楽の一つに過ぎないものが今も続いているとなると、サーバーは宇宙にあるとしか考えられんのじゃ」
スセリは続ける。
「そして推測を飛躍させると――旧人類は現在でも生き残っておる可能性がある。旧人類は荒廃した地上を捨てて宇宙に逃れたのじゃ」
とてつもなく大げさな話になってしまった。
旧人類は滅びたのではなく逃れた。
そう彼女は言った。
「さて、そうなると、一つ懸念すべきことが出てくる」
旧人類は滅んだ大地を見捨てて宇宙に逃げた。
それから1000年。
大地に再び緑が芽吹き、生物が暮らせるようになった。
「旧人類は帰ってくるのではなかろうか。再生したこの星に」
「だとしたら、だいぶ身勝手だな」
「この星に帰ってきた旧人類は、いつの間にやら繁殖していたワシら新人類をどうするかの?」
「どう、って……」
捨てられた巣で繁栄していた新たなる人類。
旧人類からすればじゃまな存在だと。
だとすると、彼らの取る行動は――排除。
「旧人類が俺たちの世界を侵略してくる……」
「世界すべてを巻き込んだ大戦争待ったなしじゃ。のじゃじゃじゃじゃっ」
「笑いごとじゃないだろ。宇宙に旅立てるほどの科学が発展した旧人類にとって、俺たち新人類を滅ぼすなんて……」
「赤子の手をひねる程度じゃろうな」
この話、今すぐにでも国王陛下に話すべきではないか。
近い将来、俺たちは旧人類に滅ぼされるかもしれない。
「そう怖がるでない。単なる退屈しのぎのたわごとじゃ」
「たわごとで済ませられないと思うんだが」




