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そうして俺たちは村に帰ってきた。
ラニスが懸念していたとおり、村人たちは彼女がいけにえに捧げられずに帰ってきたことに困惑していた。
魔書『オーレオール』の紙片を代わりに神にささげたのだと説明しても、依然として村人たちは困ったようすだった。
ラニスも気まずそうな顔をしている。
帰ってくるべきではなかった、と言いたげだ。
ラニスがどうしてこんなつらい思いをしなくてはいけないんだ……。
「本当に機械人形は我々を襲ってこないのでしょうか……」
「信じてください」
「みなさん、信じてくださいっ。神さまはもう怒っていないのですっ」
「ですが、しかし……」
俺たちは必死に長老たちに説明した。
だが、彼らはやはり半信半疑だった。
必死にがんばって最善の結果になったのに、ラニスは苦悩している。
もちろん、村人たちを悪く言うつもりはない。
なのに、ラニスの居場所がなくなるなんてあんまりだ。
そんなときだった。
「おーい」
声がするほうを向くと、そこにはいつの間にかいなくなっていたスセリがいた。
……機械人形にまたがって。
俺たちはそろってぎょっと目をむいた。
「機械人形だ!」
「やっぱり村を襲いにきたんだ!」
「待て待て! 待つのじゃ!」
散り散りに逃げようとした村人たちをスセリが止めた。
「こいつはおぬしらを襲いはせん。むしろ守ってくれるのじゃ」
「どういうことですか?」
「アッシュたちが言っておったじゃろ。機械人形はもはや人間は襲わんと」
機械人形にまたがったままスセリが俺たちの前にやってくる。
「神に頼んで機械人形に新たな命令を与えたのじゃ。村人たちを守護せよ、とな」
村人が走ってこちらにやってくる。
「長老! 村の近くに魔物が!」
「なんだと!」
「ほう、ちょうどよいのじゃ」
俺たちは村の外に出て魔物が出現した場所へと向かった。
そして驚くべきことに、スセリが命じると機械人形は装備している武器で魔物を攻撃し、魔物を討伐したのだった。
機械人形がスセリの命令を聞いて行動したのだ。
「機械人形が魔物を退治してくれた……」
「これで信じてくれたかの?」
長老と村人たちは目配せし合い、それからそろってうなずいた。
「冒険者どの。心からお礼を申し上げます」
それからラニスに向かってこう言う。
「すまなかった、ラニス。お前を犠牲にしようとしたのを許してほしい。お前のような若い者を神に差し出すだなんて間違っていた」
「……! いえ、わたし、ぜんぜん平気でした!」
ラニスは満面の笑みを浮かべた。
そのうるんだ目から涙がこぼれた。
こうして彼女は犠牲になることなく居場所を取り戻したのだった。
【あとがき】
挿絵をリニューアルしました。
挿絵は以下のエピソードにあります。
1-8(エピソード8)
2-2(エピソード10)
5-4(エピソード33)
8-2(エピソード52)
11-6(エピソード77)
25-4(エピソード173)
38-6(エピソード266)
68-5(エピソード475)
112-6(エピソード785)




