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119-6

「村ではよく焚火をしておイモや魚を焼いていましたよ」

「おいしそうですねっ」


 携帯食では空腹を満たせても味気ない。

 ラニスの話を聞いていると、ほくほくのイモやおいしい焼き魚をむしょうに食べたくなった。


「前の夜に聞きましたけど、アッシュさんはランフォード家っていう、有名な召喚術師の一族なんですよね。おイモや魚は召喚できないのでしょうか?」


 ラニスがなにげなくそう尋ねてくる。

 プリシラとマリアがぎょっとして顔を見合わせる。

 ラニスに悪気はないのだろうが……。


「アッシュは金属の物体しか召喚できないのじゃよ」

「あ、そうでした。忘れてました」


 驚くわけでも気まずそうにするわけでもなく、彼女は納得するだけだった。

 召喚術などの魔法に詳しくない人間は、俺の金属召喚が世間では『できそこない』と言われているのを知らないのだ。俺もあの夜ではあえて言わなかった。

 とはいえ、それをわざわざ教えたところで彼女を困らせるだけなので、俺も「そういうわけなんだよ」と適当に返事をした。


「ア、アッシュさまは立派なお鍋を召喚できるんですっ」


 プリシラ、ありがとう。

 俺に恥をかかせまいという心意気は伝わってきた。

 ちょっとズレてる気もするが。


「鍋に穴が空いたときはアッシュを頼るとよいのじゃ」

「そうさせてもらいますね」


 なんとも謎な会話だった。



 落ち葉を踏みしめながらしばらく道を進んでいると、機械人形に出くわした。

 誰かに命じられているのか、一定の範囲内を哨戒している。

 物言わぬ、魂無き歩哨だ。


「あれって、自爆する機械人形ではありませんか?」


 見張りの機械人形は立方体に車輪がついた姿をしていた。

 ラニスがいけにえにさしだされるきっかけとなった、自爆型の機械人形だ。

 だとすると、一撃で仕留めそこなうと自爆されて大損害を被る。


「こっそり進むのじゃ」


 俺たちは道を外れて木立の陰に隠れながらこっそり進む。

 さいわいなことに機械人形は俺たちに気づくことなく見張りの範囲をぐるぐるしていた。


「この世でもっとも恐ろしいのは、なりふり構わぬ者じゃ。己の命という担保がないゆえに見境のない行動を平気で起こせるのじゃ」

「でも、ちょっとかわいそうですね。自爆を命じられているなんて」

「プリシラはやさしいですのね」


 ラニスがこんな疑問を口にする。


「古代人は魔王と戦うために機械人形を作ったのでしょうか」

「それもあるじゃろうが、人間同士の戦争のために作られたものも多いじゃろうな」

「人間同士が……。いつの時代も残酷ですね」

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