表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

830/842

119-2

 木々の陰から再び魔物が現れる。

 カマキリの魔物が二体。

 その二体は素早い動きで接近してくる。


「炎よ!」

「風よ!」


 俺とスセリが同時に魔法を発動する。

 俺の放った炎が一体、スセリの放った風の刃がもう一体の魔物を攻撃した。

 魔物たちは炎で焼かれ、かまいたちで細切れにされる。


「のどかな光景だけど油断したらいけないみたいだな」

「アッシュさん、やっぱり強いんですね」


 ラニスがにこりと笑う。


「これだけ強いのに、やさしいんですね」

「俺はやさしいのかな……?」

「甘々ですわ」

「ケーキより甘いです。アッシュさまは」


 マリアとプリシラに言われてしまう。

 ほめられて……いないな。

 ラニスは再びくすっと笑った。


「プリシラちゃん、マリアさん。強さとやさしさを両立するのはとっても難しいんですよ。強さを手に入れた人は、ちゃんとそれを使いこなせないと、ごう慢になっちゃいますから」

「アッシュなら心配いりませんわ」

「アッシュさまなら、ぜったいそんなことにはなりません」


 これもほめられて……いないのだろうな。


「アッシュさんなら、きっと二人ともしあわせにしてくれますね」

「ラニス、うらやましくて?」

「実は、はい」


 視線をそらしつつうなずく。

 いじらしいしぐさだ。

 そこにプリシラがこう提案する。


「でしたら、ラニスさまもアッシュさまと結婚しましょうっ」

「ええっ!?」

「わたし、ラニスさまならやきもち焼かないって約束しますっ」

「ええーっ!?」

「こんなアッシュでも妻の五人や六人は養える甲斐性はありますわ」

「ろ、六人って、もしかしてまだアッシュさんにはお嫁さん候補が……?」

「いるのですわ、これが」

「いるんですよねー」


 ラニスは苦笑いを浮かべていた。


「意外ですね……。アッシュさんって、一途に一人の女性を愛する人かと思ったんですが」


 ブンブンブンッ、とマリアとプリシラが頭がもげんばかりに首を横に振る。


「こやつは行く先々で異性と『仲良し』になるからの」

「困った人ですのよ」

「困ったご主人さまなんです」


 途中、俺たちは木陰に腰を下ろした休憩をとることにした。

 食べ物なら村の人たちがたくさん持たせてくれた。

 プリシラが器用にナイフで果物の皮をむいて切り分け、みんなに配る。


 果物を口に含む。

 みずみずしくて甘くておいしい。上品な味だ。

 きっと王都では高級な果物なのだろう。


「村ではいけにえを捧げる前夜にお祭りが開かれていたそうです。わたしのときは急な事態だったのでそれはありませんでしたが」


 その祭りは、いけにえになったくれた人へのせめてもの感謝か。

 あるいは、後戻りさせなくするためのものか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ