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12-5

「や、やはり、セヴリーヌさんの生活費はガルディア家が負担させていただきます……」

「そんなことよりも、弟のクロノスに言ってやってくれ。アタシのじゃまをするな、って」

「それも解決する必要がありますね……」


 そもそも、どうしてセヴリーヌはクロノス・ガルディアに命を狙われているんだ。

 さっきスセリが問いただしたが、いろいろあって返事を聞きそびれてしまった。


「セヴリーヌさんはどうしてわたくしの弟――クロノスに命を狙われているのですか?」

「アイツ、アタシからセオソフィーを奪おうとしてるんだ」


 セオソフィー。

 聞きなれないその言葉がまた彼女の口から出てきた。

 なんなんだ、セオソフィーって。


「セヴリーヌさん。あなたがセオソフィーを持っているのですか?」


 やはりディアはセオソフィーを知っているらしい。

 そしてそれをセヴリーヌが所持していることに驚きを隠せないようす。


「あのー、話の途中ですみません。セオソフィーってなんですか?」


 蚊帳の外だったプリシラが手を挙げてそう質問した。

 俺とスセリも彼女にならって手を挙げた。

 ディアがそれに答える。


「セオソフィーはガルディア家に伝わる家宝の宝珠です」


 ガルディア家には二つの家宝があるのだという。

 ひとつは蒼の宝珠セオソフィー。

 そしてもうひとつは紅の宝珠フィロソフィー。

 二つの宝珠は代々、ガルディア家の当主に受け継がれてきたのだとディアは説明した。


 つまることろ、二つの宝珠の持ち主がガルディア家の正統なる後継者というわけだ。

 で、その片方を何故かセヴリーヌが持っているという……。


「アタシはクロノスに頼まれたんだ。セオソフィーにどんな力があるのか」

「力……? セオソフィーは単なる家督継承の証ではないのですか?」

「ちょっと調べてみたら、なんか特別な魔力が宿っているのがわかったんだ」

「そうだったのですか」


 家督継承の証に特別な魔力が宿っているのをディアは知らなかったらしい。


「それで興味がわいて自分の家に持って帰ったら、クロノスの手下が毎日襲ってくるようになったんだ」

「それって盗んだってことか!?」

「借りただけだぞ」


 セヴリーヌは平然と言ってのけたが、クロノスからすれば家督継承の証の片方を盗まれたも同然。取り返しに刺客を差し向けるのも当然だ。

 本当にむちゃくちゃだ。この少女は。


 驚きのあまり目をしばたたかせるディア。

 スセリは「やれやれ」と呆れかえっていた。


「ちなみにこれがセオソフィーだぞ」


 セヴリーヌがポケットから蒼い珠を取り出してテーブルに無造作に置いた。

 これがセオソフィー……。

 小さな宝珠。

 その中心で蒼い光がゆっくりと鼓動している。


「セ、セヴリーヌさん……。これは我が家の家宝ですので、ポケットに入れるというぞんざいな扱いは控えていただけると……」

「できたぞ」


 そのとき、ヴィットリオさんがやってきてテーブルに山盛りのパスタをでん、と置いた。

 その衝撃でセオソフィーが転がり、テーブルから落下する。


「ひゃああっ!」


 悲鳴を上げるディア。

 テーブルから転がり落ちたセオソフィー。

 重力に従って床に落ち、砕け散る――寸前のところでプリシラが受け止めた。


「さすが獣人。反応がいいな」


 感心するセヴリーヌ。

 驚愕の連続に遭ったディアは貧血したみたいに顔を青ざめさせていて、今にも気絶しそうだった。

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