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村の近くにある小規模な古代遺跡。
そこには起動した機械人形が一体、徘徊していた。
真四角の物体で、底部には走行するための車輪がついている。
正面には銃口のようなものがあり、そこから光線を撃って俺たちを攻撃してきた。
敵を攻撃するためだけに製造された、しごく単純な外見をした機械人形だった。
俺たちは光線の射程から逃げて物陰に隠れる。
敵を見失った機械人形はその場に留まり、微動だにしなくなった。
どうやら射程内に敵がいないと休止状態に入るようだ。
「やっかいなものが現れたのじゃ」
スセリがそう言う。
「あの機械人形を知っていますの?」
「あれは使い捨ての突撃型の機械人形じゃ」
スセリによると、あの機械人形は敵陣のど真ん中に放り込むよう命令されているらしい。
敵に突撃し、防御を捨てて持ちうる武装で散々暴れた末――自爆する。
「じ、自爆するのか……」
恐ろしい。
まさに生ける爆弾だ。
「爆発の規模はどのくらいですの?」
「相当あるじゃろう。自爆による爆風と熱、そして無数の金属片をまき散らして周囲の敵に大損害を負わせるのじゃ」
スセリはさらに恐ろしいことを言った。
あの機械人形は物量で圧倒するために多数で運用されていたらしい。
まだたくさんこの機械人形がいると推測されるのだ。
あんなのが村に大挙したら壊滅は必至。
すぐさま村に戻り、自爆型機械人形の話を長老にした。
すると長老は思いもよらぬことを口にした。
「神の怒りに触れたのだ」
病に苦しむような苦悩の表情をしている。
「我々の捧げものをしなかったことに怒り、尖兵を遣わせたのだ」
多くの辺境の部族が独自の神を信奉しているように、この離島の村もとある神を信じていた。
古くから村の人々はその神に供物を捧げてきた。
その供物とは――人間。
若い人間の命を神に捧げ、村の平和を約束してもらっていた。
ところが最近は大陸の文化的な生活が村にも伝わり、そういった野蛮な祭事はやめていこうとい風潮になっていった。
人間の代わりとして、村は家畜や黄金などを神に捧げることにしたのだった。
「神はやはり、人間の血を欲しているのだ」
「まだそうと決まったわけでは……」
「いや、やはりそうなのだ」
若い大人たちは否定的だったが、老人たちはすっかり神罰だと信じてしまっていた。
「いけにえを捧げねば……」
長老がそうつぶやいた。
マリアがそれに反対する。
「現代の法律では人間のいけにえは禁じられていますのよ」
「しかし、この村では古くからそうされてきたのです」
いくら先進的な国に発展し、文明的な法が制定されても、それはしょせん王都周辺での話。
辺境の集落では今でも因習を守りながら人々は生活している。




