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118-1

 酔っ払いを寝かせて俺も自分の部屋に戻る。

 いい具合に腹もふくれ、眠気が訪れていた。

 この分だとすぐにでも寝られるだろう。


 そう思いながらベッドにもぐろうとした、そのときだった。

 部屋のドアがノックされる。

 誰だろう。マリアかプリシラか。


「冒険者さま。起きていらっしゃいますか?」


 少女の声。

 知らない声だ。

 その呼び方からして村人なのはわかる。


「はい。起きていますよ」

「で、では、入りますね……」


 ドアが開かれる。

 部屋に入ってきたのは俺と同い年ぐらいの少女だった。


 きれいな人だ。

 背が高く、金髪の長い髪で、垂れ目がちの美女。

 妙に色気がある。


「ご、ごきげんよう。冒険者さま」

「ああ。ごきげんよう」


 同い年くらいだとわかったので俺は敬語をやめる。

 この子、すごい緊張しているのが声と表情でわかる。

 そんなに俺、怖く見えるのか……?


「ほ、本日の『役目』をさせていただきますラニスと申します!」

「え、えっと、俺はアッシュだ」


 ぺこりとおじぎするラニス。

 役目……?

 よくわからなかったので俺もとりあえず名乗った。


「わ、わたし、こういうの初めてなのでわかりませんが、せいいっぱい『役目』をさせていただきます……」


 視線を横にそらしながらラニスは言う。

 未だにその『役目』の意味が分からない。


「ラニス。その『役目』ってなんだ?」

「……へ?」


 ぽかんとするラニス。

 それから顔を赤く染めて恥じらいながら答えた。


「そ、その、男女の……、夜の……」


 いつも鈍感だとマリアに言われている俺でもそれで察した。

 なるほど、そういうことか……。


「冒険者さまにせめてものお礼を、と」

「大人たちに言われたのか?」

「はい……」


 ラニスは捧げられたのだ。俺に。

 男女の契りをさせるために。

 ラニスが俺に近づいてくる。


「そ、そういうわけですので、脱ぎますね……」

「ちょっと待て、ラニス」


 服を脱ごうとする彼女を俺は止めた。


「『役目』は必要ない。そう長老たちに伝えてくれ」

「……!」


 ほっとしてくれると思いきや、ラニスは愕然とした面持ちになった。

 そして涙目になる。


「や、やっぱりわたしなんかじゃ冒険者さまの相手にはなりませんよね……。もっと美しい女性がよかったですよね……」

「いや、ラニスはすごく美人なんだが」


 しまった。勘違いされてしまった。

 俺はラニスに恥をかかせまいと言葉を変える。


「冒険者は肉体的な報酬は基本的に受け取るのを禁じられているんだ。あくまでも最初の交渉で提示された報酬のみを受け取ることになっている」

「そうなんですか」

「それに俺自身も恋愛関係にない女性とむやみに親密になるつもりはない」

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