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117-7

 討伐目標を倒した俺たちは村に戻って村長に報告した。


「本当にありがとうございます、冒険者さん」


 年老いた長老はていねいにお礼の言葉を述べてくれた。


「王都からこんな離島までわざわざ来ていただけるとは思いませんでした」

「困っている人を助けるのが冒険者の使命ですから」


 ならず者たちを束ね、統率して治安を維持する。

 それが冒険者ギルドのそもそもの成り立ち。

 まっとうな生き方ができない者に冒険者という名乗りを与え、対価として危険な仕事に身を投じさせる。


 そういった理念のもと、今でも冒険者ギルドはおよそ利益にならないような仕事でも決して断らずに請け負っている。

 王都から船を使って訪れたこのティオナ島での機械人形討伐も、村からもらった報酬程度ではまったくの赤字なのだ。

 もっとも、そういった努力があるからこそ、この国の治安は保たれているといえよう。


「本日はゆっくりとおくつろぎください。宴の準備もしているところです」

「宴じゃーっ」


 スセリがぴょんと飛び跳ねる。


「そこまでしていただくわけには……」

「長老。お気持ちだけで結構ですわよ」

「そういうわけにはいきません。機械人形から村を救った勇者たちをもてなさなければ。ぜひとも宴に参加してくだされ」


 意地でも断ればかえって失礼になるからと、結局俺たちは宴に参加したのだった。

 離島の小さな村であるにもかかわらず、ティオナ島の人々はありったけのごちそうと、歌や踊りで俺たちを称えてくれた。

 もてなされたからには楽しまねば失礼だと、俺たちは心行くまで食事や歌や踊りを楽しんだ。


「酒じゃ酒じゃー」


 スセリさはさっきからひたすら酒を飲んでいる。

 赤ら顔でごきげんだ。

 彼女は俺に杯を持ってくる。


「アッシュ。おぬしも飲むのじゃ」

「俺は未成年だ」

「堅苦しいやつじゃのう。王都を離れてまで律儀に法を守るとは」


 背後から俺に寄りかかってくる。

 完全に酔っ払いの絡み方だ。

 息が酒臭い。


 そのとき、にぎやかだった音楽がぴたりとやんだ。

 それから美しい歌声が聞こえてきた。

 マリアが讃美歌を披露していた。


 清らかな川の流れのような美しい歌声に、村人たちはじっと聞き入っていた。

 歌が終わる。おじぎするマリア。

 村人たちはいっせいに沸き立った。


「女神さまだ!」

「女神さまの聖なる歌だ!」

「ほ、ほめすぎですわ……」


 そんなふうに宴は深夜まで続いた。

 宴が終わると俺たちは長老の屋敷の個室で就寝することになった。


「まったく、お前ってやつは……」


 泥酔した前後不覚のスセリを部屋まで運び、ベッドに横たえる。


「のじゃじゃじゃじゃっ。ワシは英雄じゃー」

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