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クラリッサさんがセヴリーヌの頭をなでる。
眉をひそめるセヴリーヌ。
「子供あつかいするなっ」
「ねえねえ、昔っからずっと歳をとらないってホントなの?」
「そうだぞ。アタシは不老の人間なんだ」
「うらやましいわー。私ももうちょっと若ければ歳をとらなくしてもらったのに」
「お前には魔力がないから、どうせ無理だぞ。っていうか、なでなでするなっ」
セヴリーヌは自分の頭をしきりになでるクラリッサさんの手を払った。
クラリッサさんは「あらあら」と肩をすくめた。
完全に子供扱いだ……。
「それよりも、パスタだ。パスタを食べさせろっ」
「どういうこと?」
俺たちはこれまでの経緯をクラリッサさんに説明した。
スセリの新たな身体を用意するためにセヴリーヌの力を借りる。
その対価として『夏のクジラ亭』で好きなだけ食事を食べさせること。
「カネならアッシュが払う。だからこやつに毎日食事を出してやってほしいのじゃ。クラリッサ」
「もちろんよっ」
クラリッサさんは快諾してくれた。
そしてウィンクする。
「お代も取らないわよ」
「いえ、いくらなんでも全員の食事を無償で提供してただくわけにはまいりません。わたくしはガルディア家の娘です。父に理由を説明すればいくらでもお金は支払えます。セヴリーヌさんのお世話はガルディア家がいたします」
「子供はそんなこと気にしなくていいのよ」
「し、しかし……。それにわたくしは子供では――」
「アタシは子供じゃないぞっ」
「さあさあ、おなか減ったでしょ。食堂に行きなさい」
本当にいい人だ。クラリッサさんは。
ああいう人が母親だとしあわせになれるんだろうな。
食堂のテーブルに俺たちは座る。
俺の隣にはプリシラ。
その隣にはスセリ。
対面にはディア、セヴリーヌ。
「また増えてないか?」
厨房からヴィットリオさんが現れてそう言った。
「お前がコックか。パスタを作ってくれ」
「パスタか。いいだろう」
ヴィットリオさんは幼い外見のセヴリーヌに『お前』呼ばわりされても別段気にしないようすで厨房に行った。
それにしても尊大な態度をとるヤツだな。セヴリーヌは……。
「先ほどの話の続きですが、セヴリーヌさん。我がガルディア家があなたの保護をしたいと思うのですが、どうでしょうか」
「いらん」
その一言でディアの厚意を一蹴する。
「アタシはお前の弟に命を狙われて迷惑してるんだぞ」
「その問題はこれからどうにかいたします」
「とにかく、アタシにはウルカロスだけでじゅうぶんだ」
「し、しかし……。やはり食事をいただくからには対価を支払わねばなりません。失礼ですがセヴリーヌさん。財産のほうはどれほどあるのでしょうか」
「カネか? カネなんていくらでもあるぞ」
軽く言ってのけられて仰天するディア。
セヴリーヌは大きな口を開けてあくびをする。
「複製術を使えば金貨を好きなだけ増やせるからな」
「そ、それは通貨偽造では!?」
「そうなのか。法律とか、よくわからん」
200年以上も生きて世捨て人みたいな生活をすると、こんなふうになってしまうのだろう……。




