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「この旅は終わるが、俺たちの仲は終わらないだろ。『シア荘』に遊びにくればいいし、俺たちだってキィの家に遊びにいきたい。プリシラやマリアだって同じ思いだ。スセリはちょっとわからないけどな」
「……アッシュ・ランフォード」
キィが困った表情をする。
だから俺は笑ってみせた。
彼女もそれにつられて薄く笑った。
「俺たちは仲間だ」
「仲間、か……」
その言葉をかみしめるようにつぶやく。
「ありがとう」
そのときだった――突如、部屋全体ががくんっと縦に揺れたのは。
同時にすさまじい爆発音が外からした。
「な、なんだ今のは!?」
「くっ」
キィがすぐさま壁にかけてあった剣を手に取る。
なにがあったのか尋ねに行こうと部屋を出ようとしたとき、部屋の扉が開いてプリシラとマリアとスセリが駆け込んできた。
「あれを見てくださいっ」
廊下に出て窓から外を見る。
キィの部屋の窓からは視覚になって見えなかったが、廊下の窓からははっきりと爆発音の正体が映っていた。
巨大な化け物が町中に出現していたのだ。
城下町。
町のど真ん中に怪物は立っていた。
どの建物よりも背が高く、四角い建物が並ぶ町並みで頭が飛び出てやたら目立っている。
その姿は竜に酷似している。
二本足で立っていて、背中には竜の翼はついていない。
知性のなさそうな獣の目で周囲の兵士を見下ろしている。
「どこから現れたんだ……」
「目撃情報によると、突然空から出現したとのことです」
兵士が俺たちに教えてくれた。
誰かが召喚したのだ。
誰が、なんの目的で。
怪物が顔を上げてきょろきょろと周囲をうかがう。
そして標的を見つけたかのようにある一点を見つめだした。
王城だ。
怪物が口を開く。
口の中から光がこぼれ出てくる。
その光が限界まで強まると、極太の光線が発射された。
極太の光線は王城に直撃――からわずかに逸れ、尖塔を一つ吹き飛ばした。
あんなのが直撃した城は吹き飛ぶぞ。
「この魔物を撃破せよー!」
兵士長らしき人が仲間に合図する。
兵士たちが怪物に群がって足を槍でつつく。弓で射る。
しかし、怪物はびくともしない。
ここは俺が魔書『オーレオール』の力を借りた魔法で倒すしかない。
ありったけの魔力を使えばこの巨大な怪物だろうと倒せるはず。
魔法を唱えようとしたが、それは飛んできた氷の槍にじゃまされた。
氷の槍が手元をかすめめ、石畳の床にぶつかって砕け散る。
攻撃を受けた。
どこから。
「アッシュ! 右じゃ!」
右を振り向くと、そこには二度も戦った暗殺者の小さいほうがいた。
ちびの暗殺者が接近戦を仕掛けてくる。
振りかざした氷の刃を攻撃してきて、俺はそれを剣で防御した。




