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116-2

 余計な首をつっ込むなと言われるどころか快諾されるとは。

 よっぽど手に余っていたのだろうな。


「和平の使者どののお手を煩わせるなんてお恥ずかしい限りですが、今、ディアトリア王国はイス帝国を自称するやからを相手にするので手一杯でして……」


 などと言い訳していた。



 こうして俺とプリシラとスセリは魔物の討伐に乗り出した。

 城と城下町をぐるりと囲む防壁の外に出る。

 防壁の外の街道はろくに整備されておらず荒れ果てていた。


 街道は二手に分かれていて、片方は隣接した町へと続く最短の道。

 もう片方は遠回りの道。

 現在、人々は遠回りの道を使っている。


 なぜかというと、近道のほうを例の厄介な魔物がなわばりにしているからだ。

 俺たちはその道を進んでいった。


「すまないスセリ。無理に付き合わせて」

「別に嫌ではないのじゃ。おぬしとワシは一心同体じゃからの。のじゃじゃじゃじゃっ」


 意外な返事だった。


「わ、わたしもアッシュさまと一心同体ですっ」


 プリシラが謎の対抗をする。

 スセリがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 これはいじわるをするときの表情だ。


「ならば当然、一夜を共にしたこともあるのじゃな?」


 プリシラはきょとんとする。


「え? いっしょに寝たって意味ですか? 冒険をしているときはいつもそうですが」

「すがすがしいほどに純真無垢じゃの」


 ふしぎそうに首をかしげるプリシラだった。


「とにかくアッシュよ。余計なお世話をするのがおぬしの欠点でもあり、美点でもあるのじゃ。それを失えばおぬしは凡人と化すじゃろう」

「えっと、ほめてくれてるんだよな……?」

「好きに受け取るがよい」


 前にも似たようなことを言われた気がする。


「アッシュさまのそれは間違いなく美点です。困っている人を放っておけない正義感の持ち主なのです。わたしはそんなアッシュさまにお仕えできて光栄です」

「ありがとう、プリシラ」


 街道を歩きながら雑談を続ける。


「ディアトリア王国は交渉の場に着くかな?」

「仲裁役が出てきてくれてほっとしておる大臣もいるかもしれんぞ。ヴォルカニア王国の支援を受けて兵力を強化したイス帝国と一戦交えれば、ちょっとのやけどじゃ済まんからの」


 となると、戦争を望んでいるにもかかわらずヴォルカニア王国は和平の手助けをすることになったのかもしれないのか。

 おかしな話かもしれないが、平和的な交渉には武器という力が不可欠なのだ。

 力なき者の言葉に誰が耳を傾けようか。


「いました! アッシュさま!」


 プリシラが前方を指さす。

 そこに今回討伐する魔物がいた。

 岩陰に隠れてそっと覗き見る。


 ツノを生やした、太った四つ足の巨獣。

 それが今回の討伐対象である魔物――コラプビースト。

 この魔物はこれまで何人もの兵士や冒険者を倒してきた。

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