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114-2

「お前たちはノッポの相手をしろ。私はチビを始末する!」

「戦力は均等に配分したほうがよいと思うがの」

「私は一人でじゅうぶんだ!」


 キィは再び小さい暗殺者に向かっていった。

 残りの俺たち四人は背の高いほうの相手か。

 暗殺者は刀身の短い剣を構える。


「お前たちの情報は事前に得ている。お前たちを片付け、任務完遂と同時に魔書『オーレオール』をいただく」

「やれやれ。ワシらに勝てると思っておるのか?」

「多勢に無勢を教えてさしあげますわ!」

「多勢に無勢? それはこちらのセリフだ」


 暗殺者の輪郭がぶれる。

 思いもよらぬことが起こった。


 暗殺者の輪郭が大きくぶれ、左右に二つの分身を生み出した。

 さらにそこからもう一体ずつの分身が出現し、暗殺者は五人に増えたのだ。

 分身の魔法を使ったのか。


 分身は各々意思を持っているらしく、素早く移動して俺たちを包囲した。

 なるほど。俺たちのほうが無勢だったわけだな。


「動くと急所がずれる。黙って死ぬのを待つのが賢明だと忠告しよう」

「この暗殺者、意外と口数が多いの。程度が知れるのじゃ」

「ふっ、愚かな」


 分身を含めた暗殺者五人が一斉に襲い掛かってきた。

 俺たちはそれを迎撃する。


 それぞれ一人ずつ。

 余ったもう一人はスセリが余分に受けてくれた。

 恐るべきことに、彼女は二人を相手にしているというに余裕の動きで翻弄していた。


「アッシュ・ランフォードよ。ここが貴様の墓場だ」


 目で追っていたところ、どうやら俺が相手をしているやつが本体らしい。

 近づいては離れ、近づいては離れ、剣と剣を幾度も打ち合う。

 絶え間ない攻撃のせいで魔法を唱える隙がない。


「せめてもの慈悲だ。墓標くらいは立ててやろう」


 本当に口数が多いな、こいつは。


「おしゃべりが過ぎると舌を噛むぞ」


 スセリをまねて軽口を言ってみたが、言った直後に恥ずかしくなった。


 互いに正面から何度も剣を打ち合う。

 どうにか隙を見計らって魔法を放つも、あっさりとかわされてしまう。

 当たり前だがこいつ、人間との戦いに慣れている。


 今のところ互角の戦いだが、消耗していずれ致命的な隙をさらすのは素人の俺だ。

 その前に決着をつけないと。

 そんなことを思っていると、近くから悲鳴が聞こえた。


「きゃあっ!」


 誰の声だ!?

 暗殺者の動きがぴたりと止まる。

 そしてつい今まで相手をしていた俺を放置して、相方のほうへと駆けていった。


 相方の小さいほうは頬に赤い一本の傷をつけてうずくまっていた。

 そこに背の高いほうがやってきて、心配そうに顔を覗く。


「だいじょうぶか?」

「へ、平気……」

「勝負あったな」


 キィは剣の切っ先を小さいほうにつきつけていた。

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