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114-1

 故障したのだろうか。

 呆然としていると、キィが立ち上がって俺たちをせかした。


「すぐに外に出ろ!」


 車掌の制止も聞かず彼女はドアを開けて外に飛び出した。

 困惑しつつ俺たちもそのあとに続いた。


 列車は荒野のど真ん中で止まっていた。

 イス帝国の姿はまだまだ見えない。


「れ、列車が凍っています!」


 列車が停止した理由はすぐにわかった。

 わかったが、あまりにも不可解だった。

 車両の車輪に氷が付着して氷漬けになっていたのだ。


 自然現象とは思えない。

 魔法によるものか。

 しかし、なんのために、誰が……。


「なるべく列車から離れるぞ!」

「キィ、理由を説明してくれ!」

「これは和平の使者である私たちを狙う者たち――暗殺者の仕業だ」


 合点がいった。

 ここにいると、列車にいる人たちがその暗殺者たちの犠牲になりかねない。

 なるべく遠くに逃げ、戦いに巻き込まないようにしないと。


「あれを見るのじゃ!」


 スセリが列車の上を指さす。

 列車の屋根に黒い外套をまとった人間が二人、立っていた。

 こいつらが暗殺者……。


 俺とプリシラとマリア、そしてスセリとキィは全速力で列車から離れて逃げた。

 暗殺者二人も屋根から飛び降りて追ってくる。


 背の低いほうの暗殺者が手から氷の刃を放つ。

 その攻撃魔法を俺はとっさに作った障壁魔法で相殺した。

 痛いほどの冷気がかざした手に伝わってくる。


 スセリが反撃を繰り出す。

 手から魔法の矢が放たれる。

 背の高い暗殺者が俺と同じく障壁魔法を作ってそれを打ち消した。


 列車からだいぶ離れた。

 俺たちは暗殺者たちを返り討ちにすべく、立ち止まった。

 凸凹暗殺者二人も立ち止まる。


「どうしてじゃまをするのですか!」


 プリシラが叫ぶ。


「わたしたちが仲直りのお手伝いをしないと、戦争になっちゃうんですよ!」

「……」


 暗殺者二人は返事をしない。

 かと思いきや、背の低いほうが言葉を返した。

 感情のこもっていない、冷たい声で。


「だからどうした」

「『どうした』って……」

「我々は与えられた任務――貴様らの暗殺を遂行するのみ」

「こやつらもあくまで仕事でこうしておるのじゃよ、プリシラ」


 キィが鞘から剣を抜く。


「ヴォルカニア帝国の差し金か?」

「暗殺者が雇い主の名を言うと思うのか?」

「思わないな!」


 キィは剣を構えて接近を試みた。

 背の低いほうが手をかざす。

 その手から無数の氷のつぶてが発射される。


 キィは剣を降って氷のつぶてを打ち払う。

 剣の間合いに入った瞬間、彼女は剣を真横に薙いだ。

 暗殺者たちは飛び退いて回避する。

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