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113-6

 薬草の採取のみならず凶暴な魔物も討伐し、冒険者ギルドに感謝された。

 報酬もかなりの額をもらうことができた。


「ありがとうございますっ」


 薬草の採取を依頼してきた少女にもお礼を言われた。


「お母さんの体調、よくなるといいな」

「はいっ。きっとよくなります!」


 少女が本来支払うべきはずだった報酬は、今回はギルドが全額負担することになった。

 もちろん借金ではない。

 リザードの死体をきれいに持ち帰った特別報酬の分を少女に分けてほしい、と俺が頼んだのだ。


 案の定、スセリには「お人よしじゃな。呆れるほど」と言われてしまった。

 冒険者の本質は人助け。

 持たざる者に負担を強いるのは本質から外れることになる。



 夜。

 宿屋の部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。

 訪ねてきたのはキィだった。


「アッシュ・ランフォード。一人部屋でよかったのか?」

「どういう意味だ?」

「いや、その」


 キィは顔を赤らめて視線をそらす。


「お前たちは男女の関係なんだろ……?」


 そういう意味だったのか。

 俺は苦笑する。


「俺たちは仲間だ」

「そ、そうか……」


 彼女の純情なところを見てしまった。

 キィは壁に背をもたれて腕組みする。


「拍子抜けした」


 ため息をつくキィ。


「アッシュ・ランフォード。お前はなんていうか、普通だな」


 そのため息からしてほめているわけではなさそうだ。


「お前たちの活躍は王族の間でも有名だ。王国の危機を何度も救ってきたそうじゃないか」

「なりゆきでな」

「『稀代の魔術師』の後継者であり、魔書『オーレオール』現所持者でもある」

「それもたまたまだ」

「私は、アッシュ・ランフォードがどんな英雄なのか、会えるのを楽しみしていた」


 だとすると、さぞかしがっかりさせたろう。

 アッシュ・ランフォードがどういう人間なのかくらい自分が一番わかっている。


「絵本に出てくる勇者なんてそうそういないさ」

「だとしても、お前は平凡すぎる」


 またしても嘆息。


「けど、たぶんそこがお前のよさなんだろうが……」


 そのとき、スセリが部屋に入ってきた。


「なんじゃおぬしら。こんな夜更けに逢瀬とは。まあ、男女が夜中に逢う理由など一つしかなかったの」

「か、勘違いするなっ」


 キィが慌てて否定した。

 スセリはにやりとする。


「ゆめ気をつけるのじゃな。人畜無害を装ってアッシュは今まで何人もの乙女を自分のものにしてきたのじゃからな」

「そういう魂胆だったのか……!」


 キッとキィににらみつけられる。

 会いにきたのは彼女のほうからなんだがな……。

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