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112-7

 国王陛下が三つ編みの少女キィを紹介する。


「この子の名は『キィ』。お前たちと同じくディアトリア王国とイス帝国の仲をとりもつ和平の使者だ。キィには己が語る言葉を私の語る言葉とするのを許している」

「国王陛下の代理ですね」

「キィは何者なんですか?」

「それをお前たちが知る必要はない」


 秘密ということか。

 それにしても、こんな幼い少女が国王陛下の代理とは。

 おそらく高貴な家柄なのだろう。


「キィ。キミとここで再会するなんてな」

「なんだ、お前たち。キィと顔見知りなのか」


 俺とキィの出会いを説明すると、国王陛下は大笑いした。


「はははははっ。キィらしいな!」

「旅の道連れの実力は量らなくてはならないからな」

「で、アッシュ・ランフォードはどうだった? キィのお眼鏡にかなったか?」


 キィは呆れたふうにかぶりを振った。


「はっきり言って足手まといだ。頭数にも入らん」

「らしいぞ。アッシュ・ランフォード」

「手厳しいですね。はは……」


 俺は笑ってごまかした。


「だが、キィ。これからお前たちは仲間だ。仲良くするのだぞ」

「旅に支障をきたさない程度に手は組む。それでいいだろう?」

「肩を組んで歌を歌えるくらいには仲良くなれ」

「無理だな」


 キィが腕組みして言う。


「グレイス王。和平の使者は私一人で構わない」

「だめだ。お前はまだまだ未熟。彼らの力を借りるべきだ」

「私が未熟だと」

「半人前だ。まだまだな」


 そう言われたキィは不愉快そうに眉をひそめた。

 彼女と共に旅をするのか。

 先行きが不安でしかたない。


 プリシラがキィにおじぎする。


「キィさま。どうか仲良くしてください」

「……」

「わ、わたしたち、同い年くらいだと思いますからっ」


 プリシラは緊張しつつも笑顔をつくった。

 キィはそんなけなげな彼女から視線をそらしていた。


「キィは自分こそこの世界で最も強い人間だと自負している。弱者には決して心を開かない。手ごわいから覚悟しておけ」


 国王陛下が忠告したのだった。



 こうして俺たち五人は和平交渉の場を提供するため、二つの国へと旅立った。

 がたんごとんと揺れる列車。

 俺とプリシラとスセリとマリアは向かい合う四人掛けの座席に。隣の座席にはキィが一人で座っている。


「最初はイス帝国ですね。どんな国なのでしょう」

「なんの変哲もない国じゃろう。一部の貴族たちが独立した国じゃから領土は狭いじゃろうがな」

「歓迎してくれるだろうか」

「それはワシらの腕の見せどころじゃな」

「スセリさま。くれぐれも余計なことは言わないでくださいまし」

「ワシは子供かっ」

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