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112-6

 次の瞬間、三つ編みの少女は俺の返事も待たずに攻撃を仕掛けてきた。

 低姿勢からの急接近。

 肉薄してからの剣の一振り。


 回避がわずかでも間に合っていなければ、俺の喉首から鮮血が噴き出していただろう。

 少女は無表情のまま、二撃目、三撃目と畳みかけてくる。

 俺はそれらをすべていなしていく。


 魔法を唱える隙すら許さない連撃。

 だというのに俺はうかつにもまばたきをしてしまった。

 たった一度のまばたきだったというのに、その刹那に少女の剣の切っ先が目の前に迫ってきていた。


 回避は間に合わない。

 ……かと思いきや、少女の剣は俺の心臓を貫く手前でぴたりと止まった。


「やれやれなのじゃ」


 スセリが三つ編みの少女の手首をつかんでいた。

 俺はほっと息をつく。

 気が付くと、繁華街を歩く周囲の人たちは俺たちを避けるように輪を作っていた。


「なんだなんだ。決闘か?」

「物騒だな」

「あの女の子、剣を持ってるぞ」


 などなど、人々がしゃべっている。

 三つ編みの少女はスセリの手を払いのけると、剣を鞘に納めた。


「弱いな。アッシュ・ランフォード」

「す、すまない」

「謝ってどうしますの!」


 マリアが言う。

 三つ編みの少女は「やれやれ」とかぶりを振る。


「こんな体たらくではこの先不安だな」

「キミは一体……」

「私はカギだ。この先の運命を決める、な」


 意味深なことを言い残すと、少女は人だかりの中に消えていった。


「おケガはありませんか? アッシュさま」

「アッシュも大変ですわね」

「モテる男は苦労も多いのじゃよ」


 プリシラがマリアたちがさほど驚いていないのは、決闘を申し込まれたのは過去にも何度かあったからだ。

 俺たちは過去に幾度も難題を解決してきた冒険者。うぬぼれているわけではないが、名は知られている。

 腕に覚えのある人間が手合わせを所望することがたびたびあるのだ。


 もっとも、往来で幼い少女というシチュエーションは初めてだったが。

 ベオウルフのように剣で生計を立てている子なのかもしれない。


「カギってなんだろうな?」

「意味深な言動がカッコイイと思う年頃なのじゃよ。おぬしも懐かしいじゃろ」

「いや、別に」

「『鎮まれ、我が右腕よ!』ってやらんかったのか?」

「……ないな」


 それにしてもあの子、すごい剣さばきだった。

 そんじょそこらの冒険者なんて手も足も出ないだろう。

 ベオウルフに匹敵する実力だった。



 彼女の名前が『キィ』だというのを知ったのはそれからすぐだった。

 あの物騒な出会いから数日後、俺とプリシラとスセリとマリアは王城に呼ばれた。

 玉座の間に入ると、国王陛下の前にキィはいたのだ。



人物紹介

挿絵(By みてみん)

【キィ】

アッシュに戦いを挑んできた少女。

王家とつながりがある。

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