112-2
演奏が終わり、ダンスも終わる。
すべての勝負が終わって、結果発表となった。
マイクを持ったラピス王女が告げる。
「街角お姫さまコンテストの優勝者は――」
そこで一呼吸おいてから、こう言った。
「モニカちゃんです」
「やったーっ」
幼い少女のお姫さまがぴょんぴょん飛び跳ねた。
全員が彼女とナイトに拍手を送る。
「優勝おめでとう。小さなお姫さま」
「ありがとうございます、王女さまっ」
ラピス王女によって、少女の頭にティアラが飾られた。
こうして王都のお姫さまはこの小さな少女となったのであった。
彼女たちこそこのコンテストの主役だったのだ。
「残念だったな、マリア」
「でも、納得もしていますわよ」
マリアはふふっと笑う。
小さなお姫さまはナイトの少年の頬にキスをしている。
初々しい光景だ。
そんな彼女がお姫さまになったのを誰が文句をつけるというのか。
こうして街角お姫さまコンテストは終了した。
コンテストの結果は翌日の新聞にしっかりと載っていた。
「わたくし、懐かしくなりましたわ」
マリアが言う。
「わたくしとアッシュの幼いころを思い出してしまって」
そうだろうか。
俺は疑問に思う。
俺はあの少年みたいに王女に尽くすナイトだった記憶はない。
「俺はもっと不甲斐なかったろ」
「そんなことありませんことよ。アッシュはいつもわたくしを守ってくれましたわ」
幼いころ、マリアが魔物に襲われそうになったことがあった。
大人が駆けつけるまで、俺は木の棒を武器にして、必死に魔物を追い払おうとしていた。
――とマリアが懐かしげに話した。
そういえばそんなこともあったけっか。
すっかり忘れていたのを思い出した。
思い返せば、とんでもなく無謀だった。無傷だったのが奇跡的だ。
「アッシュは勇敢でやさしい、わたくしのナイトですわ」
それから苦笑する。
「ですけどときおり、その勇敢さとやさしさを他の女の子に向けるのに、やきもちをやいてしまうこともありますわ」
ずいっと俺に密着してきて、肩と肩が触れ合う。
彼女の体温が密着した部分から伝わってくる。
理性を狂わせる彼女の香りも……。
「あなたのまごころを独占したい――なんて、わがままかしら?」
マリアが俺を見つめてくる。
ねだるような視線に俺はどきっとしてしまう。
自信家でプライドの高い彼女がこんな表情をできるだなんて……。
「今のは冗談ですわ。分け隔てのない優しさをあなたから奪ってしまったら、あなた本当に凡人になってしまいますもの」
俺が返事に困っているとマリアはウィンクしたのだった。




