110-7
サルヴァークが俺の前まで走ってきて剣を振り上げる。
その瞬間、俺は死を覚悟した。
剣が俺に振り下ろされる――その直前、サルヴァークの動きが止まった。
「なんだと!」
サルヴァークの剣を握る手に、魔法のムチが絡まって動きを止めていた。
魔法のムチはスセリの手から伸びていた。
「茶番はここまでなのじゃ」
スセリが魔法の火球をヘビ人間たちの群れに投げ込む。
火球は大爆発を起こし、ヘビ人間たちを一網打尽にした。
それが戦いの合図となった。
俺たちを囲って観戦していたヘビ人間たちは次々と武器を手にして襲いかかってきた。
もはや決闘でも処刑でもない。
大乱戦だ。
プリシラもマリアも武器を持って大勢のヘビ人間を相手に戦いだす。
妖精のニーナは上空に逃げていた。
スセリがうずくまる俺の側に寄る。
「おぬしは何度油断すれば学習するのじゃ」
「ぐっ!」
背中に刺さっていた槍をぶっきらぼうに引き抜くスセリ。
再び激痛が走る。
血が次々と出ていくのがわかる。
「待っておるのじゃ」
スセリが傷に手を添えて治療の魔法を唱える。
傷はまたたく間にふさがって痛みも引いた。
「ありがとう、スセリ」
「お安いご用なのじゃ」
乱戦のさなか、俺とスセリはサルヴァークと対峙する。
「愚かなまねをしたの、サルヴァーク。正直に一対一で決闘をしておれば、万が一でもおぬしに勝ち目はあったものを」
にやりとするスセリ。
「ワシらが戦いに加わった今、もはやおぬしに勝ち目はない」
プリシラとマリアは大立ち回りを繰り広げ、大勢のヘビ人間たちを次々と倒している。
よく見ると、スセリの姿に似た謎の人間が何人もいてヘビ人間と戦っている。
これは、彼女が魔法で生み出した分身か。
「こいつらを殺せ!」
サルヴァークが俺たちを指さすと、やつの側にいたヘビ人間たちが一斉に襲いかかってきた。
槍の矛先を向けて突進してくる。
俺とスセリはそれを回避しつつ、剣と魔法の攻撃をくらわせて返り討ちにした。
左右からもヘビ人間たちが襲いくる。
それらも俺とスセリは剣と魔法でたやすく倒した。
俺たちの実力を目の当たりにしたサルヴァークはさすがにうろたえていた。
「ザコに頼っておらんと、いい加減自分でかかってくるがよい」
「いいだろう! 死ぬがいい!」
左右。それに背後からヘビ人間たちがくる。
正面からはサルヴァーク。
俺は魔力を込めた右手の拳を横に払う。
俺を中心に衝撃波が発生し、ヘビ人間たちをまとめて吹き飛ばした。
唯一、サルヴァークだけがそれを押しのけて接近してきた。
俺とサルヴァークは再び剣と剣の戦いをはじめる。
サルヴァークは強い。
だが、俺だって弱くない。
手下のヘビ人間たちがときおりサルヴァークに加勢してくるが、その相手はスセリがしてくれた。




