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「わ、私、天に召されるときが来たのでしょうか!?」
慌てたようすのアステリア王女。
まだ心の準備ができたいなかったらしい。
「天国に行けるのでしょうか!? 地獄じゃありませんよね!?」
「日頃の行い次第じゃろ」
禁忌とされている『ウルテラの迷宮』にこっそり忍び込んだあげく、王女という身分でありながら命を落としてしまったのだから、かなりきわどいところだ。
「うわーん! どうしましょう! 私、夕食のつまみぐいや勉強中の居眠りとかしっちゃってるんですー!」
「なら地獄じゃな」
容赦のないスセリであった。
あわあわと慌てだすプリシラ。
「い、今から神さまにお祈りしましょうか!?」
「さすがに手遅れではありませんこと?」
「神さまー! 天国に連れていってくださーい!」
そう泣き叫びながらアステリア王女は天へと昇り、やがて消えてしまった。
空に昇っていったのだから、おそらく天国へ行けるだろう。
俺は楽観視していた。
無事に地上に帰ってこれた俺たちは今、王城の玉座の間にいる。
玉座には国王陛下が、そのとなりにはラピス王女が座っている。
「アッシュ・ランフォードとその仲間たちよ。王都の問題解決と、アステリア王女の迷える魂の解放、見事であった。王国を代表して礼を言おう」
「おつかれさまでした、アッシュさんにマリアさん。それにプリシラ」
あれから魔力を測ったところ、希薄になりかけていた魔力は元どおりになっていた。
地下にある『ウルテラの迷宮』の魔力の吸収は完全に止まったのだった。
「お前たちはこれまで幾度も難題を解決してきたが、今回ほどの活躍は初めてだろう。それに見合う見返りをくれてやらねばな」
国王陛下は再度、俺たちに王城勤めをしないかと持ちかけてきた。
他人からすればもったいないのだろうが、俺たちはそれを丁重に断った。
俺たちはあくまで冒険者。帰る場所は『シア荘』なのだ。
「ならば、アッシュ・ランフォードよ。我が娘ラピスとの結婚はどうだ」
「えっ!?」
俺とプリシラとマリアは一斉に声を上げる。
「名案ですね、お父さま」
ラピス王女はよろこんでいた。
「アッシュさんとの結婚ならわたくし、大賛成です」
「ランフォード家としても王族と血縁になるのなら歓迎であろう」
「あわわわわ……」
「むむむむむ……」
動揺しているプリシラとマリア。
相手は王族。さすがにいつものように「横取りするな」とは言い出せないらしい。
「残念じゃが、アッシュはワシのものじゃ」
そんな二人を尻目に、スセリが平然とそう言った。
「違いますっ」
「違いますわっ」
すかさず二人が反論したのだった。
「やれやれ。お前は本当に仲間たちから好かれているのだな」
結局、ラピス王女との縁談はうやむやになったのだった。




