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「みなさん、とても強いんですねー」
アステリア王女が感心していた。
「戦いが終わったのならこっちに来るのじゃ」
スセリの声がしたので、装置にケーブルで接続したまま置いてあった端末のところに行く。
「なにかわかったか?」
「結論から言えば、王都の魔力を吸収してたのがこの水晶だと確定したのじゃ」
スセリは続ける。
なぜ、水晶が魔力を吸収していたのか。
それは、この水晶が魔力という概念を秘匿するためのものだからだという。
古代文明はかついて科学で反映しており、魔力の存在は一般には隠されていた。
しかし、世界には微量だが魔力が自然と存在している。
古代人は一般の人間に魔力の存在を隠すため、地下深くにこの水晶を設置して魔力を吸い取っていたのだ。
つまり、これは魔力の制御装置だったのだ。
ではなぜ、今まで魔力を制御していなかったのかというと、水晶に魔力が飽和していたから。
貯め込んでいた魔力が経年で少しずつ消耗していき、最近になって魔力が尽き、再び吸収をはじめたのだった。
これが王都の魔力吸収事件の正体だった。
「でしたら、この水晶が再び魔力で満たされれば吸収が止まりますのね」
「そうなるの?」
「どれくらいかかるんだ、スセリ。三日くらいか?」
「400年くらいじゃな」
「……」
あぜんとする俺たち。
いくらなんでも400年、魔力が不足している状態になどできない。
「『稀代の魔術師』よ。打つ手はあるのだな?」
「あるのじゃ」
意外とあっさりスセリは答えた。
彼女は俺を試すように問いかける。
「さて、アッシュよ。おぬしにはわかるか?」
……。
一応、考えはある。
だが、こんな方法、スセリは許すのだろうか。
「魔書『オーレオール』の魔力を送る……か?」
「正解じゃ」
当たっていたらしい。
「そういうわけでアッシュよ。100年ばかりそこに突っ立って魔力を送るのじゃぞ」
「できるわけないだろ」
「じゃから、魔書『オーレオール』の一ページを切り取って、水晶に貼り付けるのじゃ」
なるほど。そういう手があったんだな。
俺は魔書『オーレオール』のページを一枚ちぎり、それを水晶に貼り付ける。
乾いているはずの紙片は吸い付くようにぴったりと水晶の表面に張り付いた。
「紙片とはいえ、魔力はとてつもないほど含まれておる。これであと1000年は水晶に魔力が満たされたままじゃろう」
「『稀代の魔術師』よ。1000年後はどうするのだ?」
国王陛下が問う。
スセリは笑ってこう答えた。
「そんな先の問題など、いくら王とはいえ、おぬしが責任を感じる必要はないじゃろ」
無責任だが仕方のない答えだった。




