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106-3

 国王陛下が俺たちのほうを振り向く。

 そしてこう尋ねる。


「ここから先は私も知らぬ未知の領域。命の保証はできぬ。いいのだな?」


 俺たちはそろってうなずいた。

 その返事を見て笑みを見せる国王陛下。


「勇敢なる者たちに神の祝福のあらんことを」


 いよいよ扉をくぐるときがきた。

 その直前、スセリが「待つのじゃ」と俺たちを止める。


「全員で行ってしまっては、生きておるのか死んでおるのかも確認できんじゃろ。『ウルテラの迷宮』の外で一人待つ者がいたほうがよかろう」


 必ず帰ってくるから問題ない。

 ……と言いたいところだが、外と連絡を取れるほうがもしものときに安心だろう。

 となると、四人のうち一人が居残りか。


「ここに残る者にワシの予備の端末を預ける。それで逐一通信するのじゃ」

「で、誰が残りますの?」


 ……。

 誰も名乗り出ない。

 ここまでみんな勇敢だとは……。


「な、なんで誰も挙手しないのですか!?」

「だって、それってつまり『自分は足手まといだ』と白状するようなものですもの」

「外に残って連絡を取り合う仕事も重要だと思うが……」

「ならばワシが残ろう。らくちんじゃからの」


 スセリが立候補する。

 だが、彼女は俺たちのなかで現状、最強の戦力である。

 そんな彼女を単なる連絡係にするのはもったいない。


 ……とは言いだせない。

 裏を返せばプリシラとマリアが力不足だと言うようなものだから。

 二人にも意地があるのだ。


「アッシュよ。おぬし、ワシの端末は持っておるな?」

「あ、ああ……」

「それで外のワシと通信して情報のやり取りをするのじゃ。よいな?」

「待ってくださいっ」


 プリシラが声をあげる。


「迷宮の外にはわたしが残ります。わ、わたし、きっと足手まといになりますので」


 そこにマリアが割り込む。


「それならわたくしが残りますわ。戦力ではスセリさまやプリシラには及ばないのは自覚してますもの……」

「なにを言っておる。おぬしら、本当はアッシュと行きたいのじゃろう?」

「あうう……」

「そ、それは……」


 うなだれるプリシラとマリア。

 国王陛下が言う。


「『稀代の魔術師』よ。お前が留守番係をするのは少々もったいないと私も思う」

「いーや、もう決めたのじゃ。ワシが残る。あとは若い連中ががんばればよいのじゃ」


 苦笑するスセリ。


「ワシのような世捨て人に頼っているようでは、この先心配じゃからの」

「……わかりました。わたし、スセリさまの分までがんばりますっ」

「ルミエール家の名に恥じないよう尽力しますわ!」


 ぐっとこぶしを握って気合いを入れるプリシラとマリアだった。

 こうして俺とプリシラとマリアの三人で『ウルテラの迷宮』に挑むのだった。

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