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106-2

 プリシラが言う。


「で、でしゃばったことあえて言わせてもらいますっ。アッシュさまならどんな困難でも乗り越えてみせますっ。わたしのご主人さまなのでっ」


 マリアもそれに続く。


「陛下。アッシュを信じてくださいまし。アッシュは鈍感なところはありますけれど、肝心なときはしっかり決めてくれますのよ」


 スセリまでこう言う。


「こやつは魔書『オーレオール』を継承せし次代の『稀代の魔術師』。その気になれば世界すら滅ぼせる魔力の持ち主なのじゃ。それなのに野心も野望もない、呆れるほどの善人ときた。こき使うにはうってつけじゃぞ」

「……ぷっ」


 真剣な面持ちだった国王陛下がこらえきれずに笑い声を出した。

 そして天井を仰いで大笑いした。


「ははははっ。アッシュ・ランフォード。お前は本当に信頼されているのだな!」

「……も、もったいないくらいです」


 照れくさくなって目をそらす。

 国王陛下が「うむ」とうなずく。


「いいだろう。お前たちを信じてみよう」


 玉座から立ち、こう命じた。


「お前たちを『ウルテラの迷宮』に立ち入るのを許可しよう。迷宮を調査し、魔力が吸収されている原因を突き止めるのだ」


 こうして俺たちの『ウルテラの迷宮』の探索がはじまったのだった。



 王城の地下。

 俺とプリシラ、マリア、スセリは国王陛下とラピス王女の後に続いて長い廊下を歩く。


 発光する魔法石で照らされた、薄暗くて肌寒い通路。

 先頭に立つ国王陛下の歩みに同期して、ぽつりぽつりと魔法石に光が灯っていく。

 通り過ぎた部分の魔法石の光は次々と消えていく。


 ラピス王女が歩く速度を落として俺のとなりに並ぶ。


「ここにはわたくしも入ったことがありませんの。子供のころ、探検しようとしてひどく怒られたのをおぼえていますわ」

「おてんばだったんですね。王女は」

「子供はみんなそうではありませんの?」

「お前はもう少し王女らしい振る舞いをおぼえろ」


 背中を向けたまま国王陛下が言った。

 その口調は王というよりも父親のものだった。


 階段を下りる。

 階段もやたらと長く、不安になるほど俺たちは地下のさらに地下へと下りていく。

 地の底まで下りるのではないか。


 ようやく階段を下りきる。

 その先に待っていたのは巨大な扉だった。

 豪華な意匠の扉。


「ほう。この扉、魔法で封印がされておるのじゃ」


 やはり王家の秘密の場所へと続く扉だけあって、特別な封印が施されているのか。

 国王陛下が扉に手をかざす。


「我はグレイス王家の王なり」


 そう唱えると、扉は重く軋む音を立てながらゆっくりと左右に割れていった。

 扉が完全に開く。

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