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予想もしない事実が告げられた。
国王陛下によると、はるか大昔、王家は神秘的な魔力を発する地下遺跡を発見した。
その魔力は邪悪なるものを退ける力があり、その力を利用するため、地下遺跡の真上にこの城を建てたのだった。
王都グレイスが今も他国や魔物の侵略から守られているのは、王国自体の富や武力はもちろんのこと、地下遺跡の神秘的な力のおかげでもあったのだ。
地下遺跡の存在は国王になる者にしか知らされない、王から王へ伝承されてきた秘密だった。
ラピス王女すらこの事実は知らなかったらしく、とても驚いていた。
「陛下。そんな重要な事実を俺たちに教えてよかったのですか?」
「王都の魔力がこの城の地下に吸収されているとなれば、地下遺跡は無関係ではあるまい。それにお前たちのことは信用している」
「ほほう。ワシもか?」
いじわるな質問をするスセリ。
国王陛下は渋い顔をしながらうなずいた。
「『稀代の魔術師』。きさまの性格は気に入らんがな。きさまたちが冒険者として数々の活躍をあげているのは知っている。わかっているだろうが、他言したらその首の上からはないと思え」
「恐ろしいのう。今のうちに予備の肉体を用意しておかんとな。のじゃじゃじゃじゃっ」
国王陛下の言うとおり、おそらくその地下遺跡が魔力の吸収に関係しているのだろう。
「国王陛下。わたくしたちに地下遺跡の調査をおまかせになってくださいまし。必ずや成果をあげてみせますわ」
「そうしたいのはやまやまなのだがな……」
国王陛下は悩んでいる。
問題でもあるのだろうか。
ここまで事実を打ち明けたのだから、当然調査もまかされるとばかり思っていた。
「地下遺跡の名は『ウルテラの迷宮』という」
迷宮……。
「『迷宮』と名がついているとおり、そこは複雑に入り組んだ遺跡になっている。一度入れば、最奥にたどり着くどころか二度と帰ってこれない危険もあるのだ」
「じゃが、国王は代々地下の地図を受け継いできているのじゃろ?」
「……いや、地下の地図など存在しない」
俺たちは驚く。
「悪意を持った王が現れた場合に備え、『ウルテラの地下迷宮』の地図は大昔に破棄されたのだ。迷宮の案内ができるものは一切存在しない」
しかも、『ウルテラの地下迷宮』には守護者である魔物や機械人形も徘徊しているという。
そんな地下迷宮を手探りで探索するのなど危険極まりない。
だが、俺はこう言った。
「陛下。それでも俺たちにまかせてください。これまでもいくつもの困難を乗り越えてきました。今度も成し遂げてみせます」
「……」
国王陛下が俺を見つめてくる。
俺の意志の固さを見定めるかのように。




