105-7
俺たちは国王陛下に謁見した。
謁見には事前の申請が必要なのだが、ギルド長であるキルステンさんと『稀代の魔術師』のスセリが至急の謁見を希望すると、すぐさま謁見を許可された。
玉座の間。
俺たちは国王陛下に今、王都で起きている異常事態を伝えた。
王都全体の魔力が何者かによって吸収されていること。
そしてその吸収された魔力はこの王城に集まっているということを。
「王都の全体の魔力が吸い取られている現象は王国でも把握している」
国王陛下が顔を曇らせる。
「だが、その魔力がここに集まっているとはな」
「心当たりはありませんか? 陛下」
「情けない話だが、まったく心当たりがない」
その口調からは嘘は読み取れない。
国王陛下にはこれまでも何度か謁見しているが、この方は秘密裏に悪事を企むような人間ではないのはよくわかっている。
「だが、この城に魔力が集まっているのは確かなのだな」
「そうです。この城のどこかで、誰かが、王都全体の魔力を吸収しているのです」
横のスセリに目をやる。
俺たちは国王陛下の前でひざまずいているが、相変わらず彼女はえらそうに立っていてそんなそぶりも見せない。
国王陛下が別段気にしていないからいいものの、彼女が『稀代の魔術師』でなければ斬首されてもおかしくないな……。
「アッシュよ。おぬしは気付かぬのか?」
目が合ったスセリがそう質問してくる。
「なににだ?」
「なんじゃ。『稀代の魔術師』の後継者のくせして気付かぬとは」
やれやれと呆れるスセリ。
国王陛下が言う。
「『稀代の魔術師』よ。もったいぶっていないで話せ」
「これだけ膨大な魔力なら、魔術に心得のある者なら気付くはずなのじゃよ。魔力が集中している位置を」
「それはこの城ではないのか?」
「もっと詳細な位置なのじゃ」
この城に足を踏み入れてからというも、強い魔力自体は俺も感じている。
スセリはもっと詳しい位置が把握できるらしい。
スセリは足元を指さす。
「地下じゃよ」
「地下だと」
「この城の地下深くに魔力は集まっておるのじゃ」
国王陛下のとなりに座っているラピス王女が尋ねる。
「お父さま。お城の地下にはなにがありますの?」
「牢獄や実験施設だが、今では使っていなくて封鎖されているはずだ」
「そんな浅いところではない。深く、深くに魔力が集まっておる」
「……」
国王陛下が黙りこくる。
陛下は考えている。
地下に隠された秘密を俺たちに話してよいものか。
「まあ、お前たちになら話してもいいだろう」
国王陛下はこう言った。
「この城の真下には古代文明の遺跡があるのだ」




