表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

733/842

105-3

 ゲイズ率いる悪党たちを包囲した冒険者たち。

 その数は悪党たちを圧倒的に上回っている。

 ゲイズが忌々しげな表情になる。


「卑怯ですよ!」

「悪党が卑怯を口にするな」


 呆れたやつだ。

 歯ぎしりしていたゲイズだったが、抵抗しても無為だと理解したのだろう。手下たちに合図して、武器を足元に捨てて両手を上げて降伏の意思を示した。

 その後の彼らは冒険者ギルドによって拘束され、憲兵に引き渡されたのだった。


「おぼえていなさいよ……」


 捨て台詞を残して俺の前から消えた。


 やつらは牢屋に入れられた末、裁判によって裁かれてしかるべき判決を下されるだろう。

 ちなみに、この国で誘拐は重罪である。

 しかも、これが初犯とは到底思えないから、余罪もざくざく出てくるだろう。


 欲をかいたばかりに破滅に陥った悪党たち。

 彼らはこれから長い年月を罪の償いに費やされるだろう。

 同情の全くしない連中で俺も安心した。


 しかし、やつらも驚いたろうな。

 世間知らずな田舎貴族をカモにしようとしたら、逆に餌食にされたのだから。

 冒険者たちが立ち去ると、その場には俺と、冒険者たちといっしょにやってきたベオウルフが残った。


「アッシュお兄さん、ゲイズが嘘をついてるってわかってたんですか」

「あんなバレバレな嘘ならな」


 ゲイズはおそらく俺たちの話を偶然耳にしたのだろう。

 そしてヴァルナスティルトゥリヴァをエサに、俺たちを釣ろうとした。

 結果として釣られたのは自分たちだったのだが。


 それにしても、悪党ってやつらはよくもこう悪事を思いつくものだ。

 関心ではない。呆れているだけだ。


「またヴァルナなんとかを見つけられませんでしたね」


 しょぼんとうなだれるベオウルフ。

 彼女は今度こそ目的のものを手に入れられると信じていた。

 悪党に騙されてかわいそうだ。


「なあ、ベオウルフ」


 だから俺は、自分の中に浮かんだある考えを彼女に聞かせた。


「もしかすると、ヴァルナスティルトゥリヴァなんて存在しないんじゃないか?」

「えっ?」


 ベオウルフがきょとんとする。

 ぱちぱちとしきりにまばたきしている。


「存在しない、って、どういう意味ですか?」

「言っている意味のままだ。ヴァルナスティルトゥリヴァっていう名前は、ベオウルフの師匠が適当に名付けたんじゃないか? 存在しないものに」

「ですけど、そうなるとボクの師匠は――」


 ベオウルフの師匠は、ぜったいに見つからないものを彼女にさがさせていたことになる。

 ベオウルフはそんなこと信じられないのだろう。

 だが、もはやそうとしか考えられない。


「家に帰ったら師匠に言ってみてくれないか? 俺の考えを」

「……」

「信じてくれ。たぶんこれが正解だ」

「……わかりました。アッシュお兄さんを信じます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ