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105-2

 いい子だな。ベオウルフは。


「じゃあ、これならどうだ? 俺がベオウルフにお金を貸すっていうことにするのは。もちろん、利子も返済期間もないぞ」

「……それなら。いっしょうけんめい働いて返します」


 こうして俺たちはヴァルナスティルトゥリヴァをついに見つけたのだった。



 後日。満月が空にかかる夜中。

 俺はヴァルナスティルトゥリヴァの代金を手に、廃屋にやってきた。

 廃屋にはすでにゲイズがにこにこ笑顔で俺を待っていた。


「お待ちしておりました、アッシュさま」

「約束の代金を持ってきたぞ」


 代金の入ったバッグを見せる。

 ゲイズはそれを受け取って、中身を確認した。


「たしかに、ちょうだいいたしました」


 それから肩をすくめる。


「ですが、残念ですが、まだ足りませんねぇ」

「足りないのか?」

「これくらいじゃぜんぜん足りないのです」

「約束の代金ぴったり入っているはずなんだがな」

「……」


 ゲイズが邪悪な笑みを浮かべてこう言った。


「もっと欲しいのですよ」


 パチンッ、と指を鳴らす。

 すると、物陰から何人もの男たちが現れて俺を包囲した。


 まっとうな仕事をしているような人間ではないのが一目でわかる顔と身なり。

 いずれも手にナイフを持っている。


「……どういうことだ」

「あなたを人質にすれば、あなたのお父さまももっとお金を出してくれるでしょうねぇ」


 ぐるりと周囲を見渡す。

 俺を包囲しているのは四人。

 四方から俺を囲っている。


「……念のため質問させてくれ。あれは本当にヴァルナスティルトゥリヴァなのか?」

「……あははははっ」


 大笑いしたあと、ゲイズはこう答えた。


「そんなわけないでしょう!? 世間知らずのおぼっちゃん! あれはただのガラクタです!」


 だと思った。

 見るからに怪しいこの男は本当に見た目そのままの悪党だったのだ。


「ゲイズ。身代金目的の誘拐は重罪だ。今なら引き返せるぞ」

「あなた、自分の立場がわかってるので? ずいぶん余裕じゃないですか」

「ああ、余裕だ」

「強がりはよして、震えて泣きべそをかいてもいいですよ。そのほうが楽しいですし」

「あくまで俺を人質にするつもりなんだな?」

「もちろんです」

「わかった」


 俺は息を吸い込む。

 そして叫んだ。


「いいですよ!」


 次の瞬間、廃屋の扉が開いて大勢の人間が押し寄せてきた。


「なっ!?」


 押し寄せてきた人間は、あっという間にゲイズたちを包囲してしまった。

 俺を包囲しているゲイズたちを、さらに外側から包囲するかたちになった。


「なっ、なんですか!? あなたたちは!」

「冒険者ギルドだ。誘拐の現行犯で逮捕する」


 包囲を割って前に出てきたのは、ギルド長のエトガー・キルステンさん。

 手にした剣の切っ先をゲイズに向けている。

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