104-7
冒険者ギルドの外に出る。
結局、どれほどさがしてもヴァルナスティルトゥリヴァの正体がつかめない。
ベオウルフと俺とプリシラの三人で力を合わせても見つからないものを、彼女の師匠はさがさせている。
そこで俺は一つの考えが浮かんでいた。
これまでの努力が無に帰す、とても残酷な考えだ。
それは、ヴァルナスティルトゥリヴァが食材ではないこと。
ヴァルナスティルトゥリヴァは食べ物ではなく、別のなにかを指す言葉。
だから俺たちはヴァルナスティルトゥリヴァを見つけられなかったのだ。
となると、俺たちはまるで見当違いのさがしかたをしていたことになる。
はたから見れば滑稽でむなしい努力を必死にしていたのだ。
俺はその考えをベオウルフとプリシラに聞かせた。
「実はボクもそうかもしれないと思っていたんです」
「わたしもです……」
やはり二人も同じ考えだった。
推測が正しいとすると、そうとうやっかいなことになる。
今までは食材に的を絞れたが、そうでないとなるとどこからどうさがすのかまるでわからなくなる。
この広い王都で、たった一つの言葉の正体を探し当てるなんて……。
「しかたありません。ボクはもうあきらめます」
「あきらめちゃっていいの? ベオ」
「師匠は落胆するだろうけど、ボクにはまだその実力がなかったということだよ」
「師匠は怒らないか? もしくは失望したり」
「それはないと思います。師匠はそんな人ではありません」
それが唯一の救いだ。
でも、くやしいな。ベオウルフの手助けができなくて。
と、そんなときだった。
身なりの整った、細身の中年の男性が俺たちの前に現れたのは。
男性はにこにこと笑みを浮かべている。
「やあ、さがしものですかな?」
「えっと、あなたは……」
「おっと、申し遅れました。お初にお目にかかります。わたくし、ゲイズと言います。みなさんの会話が偶然耳に入ったもので、声をかけさせていただきました」
ゲイズさんがおじぎする。
俺たちも戸惑いながらおじぎを返した。
「みなさまのさがしているもの、わたくし存じておりますよ」
「ヴァルナなんとかを知っているんですか!」
「ええ、知っていますとも」
「教えてください」
ぐいっと詰め寄るベオウルフ。
ゲイズは笑みを浮かべながらうなずく。
「もちろん教えてさしあげましょう。では、わたくしについてきてください」
俺たちはゲイズさんの後をついていく。
大通りを外れ、路地裏と行く。
いきなり現れた他人が、俺たちが必死に探していたものを知っているなんて、そんな都合のいい話があるものなのか?
じょじょに人気の少ない場所へと進みつつあり、その不安が疑念を駆り立てる。




