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103-6

 後日、ケイとイリスが王都に来て王城に招かれた。

 そして以前、俺たちに言ったのと同じことを二人に言ったのだった。

 ラジオを法で守るという提案。


「ありがとうございます! 国王陛下!」

「とてもうれしいです」


 ケイとイリスはよろこんで受け入れてくれた。


 こうしてラジオは冒険者ギルドが管理し、そして王国はラジオの放送の決まりを盛り込んだ法律を制定することとなった。


 もっとも、新たな法律を制定するには、さすがに国王であろうと独断では決められない。

 大臣たちとの幾度もの会議を経て決められるため、時間はかかる。

 国民がラジオを楽しむにはもう少し月日が必要だった。



 冒険者ギルドのロビーの一角にて。

 俺とプリシラとマリア、スセリ。それとケイとイリスでコーヒーを飲んでいた。


「ありがとう、アッシュくん。ぜんぶキミのおかげだよ」

「いや、俺はなにもしてないさ。結局、ラジオを安全に放送できるようにしたのは王国だったんだから」

「はははっ。謙遜しちゃもったいないよ!」


 ケイが俺の背中をパンパンと叩いた。


「ふーむ。アッシュ・ランフォード。キミが獣耳ちゃんやマリアさん、それにスセリちゃんに好かれている理由がわかったよ」

「理由……」


 俺は考える。

 ……理由か。思いつかないな。

 まあ、即座に思いついたらそれこそうぬぼれがはなはだしいのだが。


「サンブロスよ。おぬしらこれから少し退屈になるのではないか?」

「そうでもないよ。俺たちはもともと両親といっしょに遺跡の探索を生業にしていたからね。これからもまたそうするつもりさ」

「それに、ラジオの台本もいっぱい書き溜めておかないといけないわ」


 イリスがテーブルに地図を広げる。

 王都を指さし、それからその指を南のほうに動かす。


「私たち、この町で両親と落ち合う予定なの」

「久々に親子で遺跡探索をするつもりさ」

「ほう、確かこの町には有名な遺跡があったはずじゃな」

「古代文明の文化を研究するにはうってつけだよ」


 となると、サンブロスとはこれでお別れか。


「ケイさまとイリスさまとはこれでさよならですね」


 しゅんとうなだれるプリシラ。


「永遠の離別ではないわよ、獣耳ちゃん。ラジオの放送のめどが立てば私たち、また王都に来るもの」

「でも、何か月も先ですよね」

「案外すぐよ。月日の流れって、無意識に暮らしていたらあっという間に過ぎるのよ」


 イリスの言うとおりだ。

 ケイとイリスはこれから家族で遺跡探索で忙しくなる。

 俺たちも冒険者としての仕事がまた舞い込んでくるだろう。


 互いにやるべきことをこなしていたら、数か月なんてあっという間だ。

 現に俺がランフォード家を出てから結構な期間がすぎたが、ほんの数日前の出来事だと錯覚してしまう。

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