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103-5

 その後、冒険者ギルドによってロッシュローブ教団の根城をさがそうとしたが、結局見つかることはなかった。

 そういった懸念は残っていたものの、あれ以降、ロッシュローブ教団は全く表に出てこなかったのでひとまずの解決となった。

 俺たちは悪の手からラジオ塔を取り戻したのだった。


 ところが、ケイとイリスは思いもよらないことを言いだした。


「ケイと相談したのだけれど、ラジオの放送はしばらく中止しようと思うの」

「えっ、どうしてですか? イリスさま。せっかくラジオ塔を取り戻したのに……」

「うーん、それがね」


 兄妹は一度顔を見合わせてから続ける。


「今回の件で思い知ったんだ。ラジオは悪事にも利用できてしまうって。今回はアッシュくんたちが助けてくれたけれど、次はこうもいかないかもしれない。ラジオの電波は海の向こうまで流すことができる。おそろしいほどの力だ」

「私たちにはそれほどまでものを守る力はないの」


 つまり、ラジオを正しく運用する責任を彼らは持っていないのだと言っていたのだった。

 それならば冒険者ギルドが護衛をすればいい、と俺は提案する。

 それでも兄妹は頑なにそれを拒んだ。


「ラジオ自体が現代の人間にはまだ早いものなんだ」

「古代文明の科学技術をわけもわからず使っていたのよ、私たちサンブロスは。あまりにも無責任だったわ」


 ラジオは中止か……。

 残念だ。

 みんな毎回楽しみにしていたのに。



 事件は解決したものの、満足した結果で終わったとは言えなかった。

 だが、それから数週間後、この件に関してさらなる動きがあった。

 王都に帰った俺たちはある日、王国の命によって王城に呼ばれたのだった。


「ごきげんよう。アッシュ・ランフォード」


 国王陛下が座す玉座のとなりに立つラピス王女が小さく手を振る。

 国王陛下が口を開く。


「ラジオ塔でのロッシュローブ教団討伐、大儀であった。礼を言うのが遅れたのを詫びよう」

「国王陛下。本日はどういったご用件で?」

「ん、ラジオに関してだ。ギルド長のキルステンからまた聞きしたかぎり、ラジオとはとても便利なものだ。サンブロスはラジオの封印を希望していたが、私はとてももったいないと思っている」


 国王陛下はこう言った。


「ゆえに、我が名のもとにラジオの再開を命じる」

「……ですが」

「わかっている。サンブロスの意思をお前たちは尊重したいのだろう」


 王国の命令で無理矢理ラジオを再開させるのは気後れする。

 国王陛下はそんな俺たちの気持ちを理解していたようだ。


「だから、私もそれなりの誠意をもって頼むつもりだ」

「具体的には、ラジオに関する法律を新たに制定するつもりですの。ですよね、お父さま」

「法律!」


 すごい。

 個人が運命していたラジオのために法律を新たに作るだなんて!

 俺たちは驚く。


「ラジオでどのような放送を許可するのか、どういった資格を持った者がラジオを運営できるか、厳格に決めるつもりだ。むろん、法を破った者は罰せられる。これならばどうだ?」

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