表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

719/842

103-3

 ラジオ室の扉の前にもロッシュローブ教団の教徒がいた。

 俺とスセリ、ケイとイリスは少し離れた場所で立ち止まる。


 その教徒から異様な雰囲気がしたのだ。

 真夜中に幽霊を見たときのような、ぞっとする恐怖。

 そいつからはこれまで退けてきた教徒とは明らかに違う気配がした。


 ケイとイリスを残し、俺とスセリは慎重に近づく。

 互いの言葉を交わせるくらいの距離になると、あちらが先に言葉を投げかけてきた。


「ほう、またお前たちと会うとはな」


 教徒がローブのフードを脱ぐ。

 その瞬間、俺の全身に怖気が走った。


 フードの下から現れたのは青年の端正な顔立ち。

 しかし、その表情は石膏でつくられた像のごとき無表情。

 鋭い眼は敵を殺すことに特化した刃のよう。


 その青年を確かに俺は知っていた。

 だが、そいつとは会うこと事態はありえないはずだった。


「……ナイトホーク、なのか」

「私でなければなんだというのだ」


 ロッシュローブ教団の幹部、ナイトホーク。

 こいつは以前、俺との戦いで自滅して死んだはず……。

 死んだ『かもしれない』ではない。間違いなくこいつが死んだところを目の当たりにしたのだ。


「なかなか面白い表情をするな」


 死んだ人間が生き返って自分の前にいるのだ。面白い顔をするのも仕方がない。


「ナイトホーク、お前は死んだはずだ。どうしてここにいる」

「私が律儀に答えを言うとでも思ったのか。お前はただ、私がここにいるという事実さえ知っていればじゅうぶんなのだ」


 スセリが「やれやれ」と肩をすくめる。

 それからたっぷりと皮肉を込めて言った。


「二度も死にたいとは変わったやつじゃのう」

「いいや、次に死ぬのはお前たちだ」


 次の瞬間、ナイトホークの姿が消えた。

 俺は本能なのか反射神経なのかも自覚できない速度で回避の動作を取った。

 ついさっき俺とスセリがいた場所に、姿勢を限界まで低くしたナイトホークがいて、ナイフを真横に振っていた。


 スセリが手から魔法の矢を放つ。

 ナイトホークはそれを障壁の魔法で防御した。

 俺は叫ぶ。


「ナイトホーク! お前はなにを企んでいる!」

「知りたいのか。まあ、これなら教えてやってもいいだろう。我々ロッシュローブ教団はラジオを使い、人々の魔王ロッシュローブが真に善なる存在であるのを周知させるのだ」


 やはりそういうことか。

 ほぼ想像していたとおりの答えが返ってきた。


「世界を滅ぼそうとした魔王を、どうしてお前たちは善だと信じるんだ」

「アッシュよ」


 俺の問いにはスセリが答えた。


「前にも言ったが、こやつらが望むのは平和でも平穏でもない。混沌なのじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ