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103-1

 俺もマリアと同様、『悪い奴』を許せなかった。

 ラジオはケルタスの人々の楽しみとして日常に浸透していた。

 ケイとイリスも楽しそうにラジオを放送していた。


 だというのに、それを踏みにじる者がいるだなんて。

 必ずラジオ塔を奪還してみせる。

 みんなのために。



 アスカノフはケルタス郊外の広い空き地に着地した。

 ここはアスカノフが発着する場所として冒険者ギルドが用意してくれたのだとノノさんが説明してくれた。

 以前、なにげなく街の広場に降り立ったとき、子供が怖がった泣き出すわ、竜翼の羽ばたきで強風が起こって洗濯物やら露店の商品やらが飛んでいって大変なことになったのだとか。


「待っていたわ、アッシュくん!」


 俺たちはすぐさま『夏のクジラ亭』を訪れた。

 俺たちの到着を待ちわびていたらしい。おかみのクラリッサさんが抱きつかんばかりの勢いで出迎えてくれた。


 背後にはセヴリーヌ。

 それにケイとイリスもいた。


「ケイ、イリス。だいじょうぶか?」

「私たちは平気よ」

「さいわいにもケガはしてない。ただ、ラジオ塔は完全に乗っ取られてしまった」


 がっくりと二人はうなだれている。


「乗っ取ったのは誰なのですか? ケイさま」

「なんか白いローブをまとった、いかにも怪しげな連中さ」

「突然、大勢で押しかけてきたのよ」


 俺たちは顔を見合わせる。

 白いローブをまとった怪しげな連中。

 間違いない――ロッシュローブ教団だ。


 俺たちは二人にロッシュローブ教団についてかんたんに説明した。


「魔王ロッシュローブを崇拝する教団……」

「暗殺組織だなんて、おそろしいわ」

「おぬしら、本当に運がよかったのじゃ。命が助かっての」


 ロッシュローブ教団はじゃまものの命は平然と奪う。

 二人が無事だったのは奇跡に近い。


「よかったわね、ケイ。あなた最初、抵抗しようとしたでしょ」

「当たり前だろ。大事なラジオを守るためなんだから。それにしても――」


 ケイがうつむいて考え込む。


「ロッシュローブ教団はどうしてラジオ塔を占拠したんだ……」

「いや、ふしぎではないのじゃ。一度に広域に情報を拡散できる装置、いくらでも悪用できるのじゃ」


 ロッシュローブ教団ならきっと、邪悪な教義を広めようとするだろう。

 下手をすれば呪いの言葉を拡散するかもしれない。

 そうなれば一大事だ。


「一刻も早くラジオ塔を取り戻さないと」

「で、ですがアッシュさま。もしかしたらもう、手遅れかもしれません……」

「いや、獣耳ちゃん。ロッシュローブはまだラジオを使えないと思うよ。ラジオ塔から逃げる前にラジオの起動プログラムに暗号をかけたからね」

「ほう、やりおるの」


 ということは、今頃ロッシュローブ教団は暗号を解読しようとやっきになってるわけだ。

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