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ラジオ塔を乗っ取られた!?
「誰に乗ったられたんだ!?」
「悪い奴らだ!」
だ、だいぶ大雑把な説明だ……。
乗っ取るのは悪人に決まっているし……。
「ケイとイリスは無事なのか!?」
「サンブロスとかいう兄妹か? それなら無事だぞ。『夏のクジラ亭』に逃げてきてる」
よかった。
一番の気がかりはとりあえずなくなった。
「とにかくさっさと助けにこい」
だが、緊急事態なのは間違いない。
とはいえ、王都から船でケルタスに向かうとなるとだいぶ日にちがかかる。
危険を承知で転移魔法を使うしかない。
「迎えはよこしたからそいつに乗ってけ」
迎え……?
ちょうどそのときだった。窓の外の景色が暗くなったのは。
大きな雲が頭上に重なったのかと思ったら違った。
「アッシュくーん」
「アッシュよ」
「わっ!」
突如、窓にぬっと竜の顔が出てきた。
アスカノフ!
ということは、もう一人の女性の声は……。
窓を開けると、アスカノフの頭を伝って赤髪の美女がギルド長室に飛び込んできた。
錬金術師のノノさんだった。
「アッシュくん、久しぶりー」
セヴリーヌのよこした迎えというのはノノさんだった。
突然の竜と美女の来襲にさすがのキルステンさんも目を丸くしていた。
「ノノさん、セヴリーヌと仲がいいんですか?」
「たまーに会いにいくくらいだけど、お友達よ」
アスカノフが窓から部屋に首を突っ込ませてくる。
「我の背中に乗れ。ケルタスまで急行してやろう」
「わ、わかった……。キルステンさん」
「ああ。行ってこい」
俺とプリシラとマリア、スセリの四人はアスカノフの頭から背中によじ登る。
最後にノノさんが乗り、先頭にまたがった。
首のあたりに装着していたたづなを握る。
「それじゃあアスカノフちゃん、お願いねー」
「承知」
アスカノフが竜の大翼をはばたかせる。
飛翔する。
俺たちを乗せた巨大な竜はあっという間に上昇した。
雲に触れそうなくらい空高くアスカノフは飛ぶ。
すごい速度だ。
これならあっというまにケルタスに到着するだろう。
「あわわわ……」
「落ちませんわよね……?」
プリシラとマリアは震えながら俺にしがみついていた。
スセリはというとあぐらをかいて余裕で空の旅を堪能している。
「存外乗り心地がよいのじゃ。人を運ぶのに慣れておるのじゃな」
そういえば、速度は速いが安定している。
俺もスセリと同じく恐怖は感じず、大空を舞う気持ちよさを感じていた。
ノノさんが振り向く。
「私とアスカノフちゃんで空の運び屋をしているのよ。お金を稼ぐためにね」
だからたづなを身につけていたんだな。
人を乗せ馴れているのにも納得だ。
俺たちは今、大海原の真上を飛んでいる。
深い青色の海面に太陽の光が乱反射している。
手前に船が見えたが、一瞬にして追い越してしまった。




