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102-5

 最初は試験的に運用するため。受信機の設置は王都の広場に限定した。

 王都の各地や各家庭に配ったりするのは、ラジオがちゃんと放送できるのか確かめてから。



 残るは王都のラジオ塔の起動。

 王都の人たちがラジオを流すのに、わざわざケルタスに船で向かうのは現実的ではない。

 だから、王都にもラジオを放送できる施設が必要なのだ。


 俺とプリシラとスセリ、マリアの四人で遺跡を探索した。

 俺たちからすればどれも同じ灰色の塔にしか見えない。

 これのどれがラジオ塔なのだろう。


「しらみつぶしにさがさなくてはいけませんのね……」


 うんざりとしたようすのマリア。


「……いや、ある程度の場所の絞り込みはできると思う」


 ケルタスを発つ前、ケイとイリスから電波ついて詳しく教えてもらった。

 電波はラジオ塔を中心に円範囲に放射される仕組みになっている。

 その範囲内にあるアンテナが電波を受け止めるのだ。


 電波を広範囲にまんべんなく流すには、どこに設置するべきか。

 答えは――都市の中心部。

 ラジオ塔はきっと遺跡の中心部に建っているはずだ。


「見事な推理です、アッシュさまっ」

「さすが将来のわたくしの夫。論理的に物事を考えられますわね」

「マリアさまー?」


 マリアの『将来の夫』を聞き逃さなかったプリシラがジト目で彼女をにらんだ。


 推測していたとおり、ラジオ塔は遺跡の中心付近にあった。

 塔のてっぺんに細い鉄の棒のようなものが伸びていて、あれが送信機だと思って中を探索した。

 中にはラジオの放送施設があったのだった。


 さいわいにも施設の機能はまだ生きていた。

 スセリが言うに、すぐにでも放送ができる状態らしい。



 冒険者ギルドにて。


「よくやった。アッシュ・ランフォードとその仲間たち」

「これでラジオが放送できますねっ」

「国王陛下がラジオに関しては我々冒険者ギルドに一任するとおっしゃった。よって、冒険者ギルドがラジオの管理をしていく」


 とはいえ、いきなりまっさらな状態でラジオを放送しろと言われても、ラジオの文化の知識に乏しい自分たちでは具体的にどんなふうに放送すればいいのかわからない。

 だからケイとイリスを顧問としてケルタスから招くのだとキルステンさんが命じた。

 二人のラジオ『サンタイム』を手本にしてラジオ番組をつくるというわけだ。


「セヴリーヌ。そういうわけじゃからサンブロスを王都に連れてくるのじゃ」


 端末の通信機能を使ってセヴリーヌと通信する。

 ところがセヴリーヌはなにかまずいことがあったのか、顔をしかめていた。


「それどころじゃない。こっちは今、やっかいなことになってるんだ」

「なんじゃ。アイスの食べ過ぎで腹で壊したのか?」

「んなわけあるかっ」


 一呼吸おいてからセヴリーヌがこう叫んだ。


「ラジオ塔が乗っ取られたんだ!」

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