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船に乗り、王都へ。
まずは兄妹の話を冒険者ギルドのギルド長であるエトガー・キルステンさんに伝えた。
「ラジオか」
あごに手を添えて考え込むキルステンさん。
「キルステンさま。ラジオってとっても楽しいんですっ。どうかラジオの放送を許可してくださいっ」
プリシラが必死に訴える。
俺はそれに加勢した。
「それに、ラジオには他にも役立てるかもしれないんです」
「ほう」
「ふむ、気になるのじゃ」
ラジオを使えば災害発生や街道付近の魔物の出没、法律や条例の布告など、多くの人々に伝える必要のある情報を一度にまとめて広められる利点がある。
俺は前々から考えていたそのことをみんなの前で発表した。
「なるほど。そういう利用もできるのですわね」
「さすがはアッシュさまですっ。わたし、思いもつきませんでした」
キルステンさんもそれを聞いて「ほう」と感心しているようすだった。
「単純に娯楽が増えるのは王都としても歓迎されることだろう。アッシュ・ランフォードが言う使いかたもできそうだ。いいだろう。国王陛下に提案してみよう」
そこまで言って「だが」と付け加える。
「ラジオ塔の起動は骨が折れそうだな。どれがラジオ塔なのか、そしてどうやって起動させるのか、古代文明に詳しいものでないとわからないだろう。わかったとしても、はるか昔の物だから壊れている可能性が高い」
「どれがラジオ塔なのかはワシがわかるのじゃ。あの兄妹に教えてもらったからの。起動もまかせるがよい」
こういうときは心強いな。スセリは。
面倒ごとが嫌いな彼女は手伝えるのを黙っていることだってできたのに。
その後、王国から正式にラジオ放送の許可が下りた。
「やりましたね、アッシュさまっ」
「特にラピス王女が興味津々だった。ぜひともラジオを放送してもらいたいと国王陛下にねだっておられた」
「あやつには感謝せんとな」
「この件は冒険者ギルドの名のもとに行う。アッシュ・ランフォード。王都でラジオを聴けるようにしろ。それが今回の依頼だ」
許可を得た俺たちはさっそく行動を開始した。
まずはアンテナと音声を流す放送機が一体となった受信機の設置。
古代文明にはラジオ文化が深く根付いていたためか、受信機は遺跡のそこら中に落ちていた。
拾ってきた受信機は当然、壊れていたが、王都の古代文明の研究者に修復を頼んだ。
受信機の構造自体は単純らしく、すぐに直してもらえた。
これを設置すれば、海を越えてケルタスからサンブロスのラジオを聴ける。




