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102-3

 サンブロスのラジオはそれからも続き、ケルタスの日常に溶け込んだ。

 今ではすっかり街の人たちの楽しみの一つだ。

 手紙を読まれたり、ゲストに呼ばれるたりするたびに人々は盛り上がっていた。


 俺たちもときどき兄妹のもとに訪れて交流していた。

 兄妹もまた、食事をとりに『夏のクジラ亭』に立ち寄ってくれていた。


 そんなあるときだった。

 ケイがこう言ってきた。


「アッシュ。キミたちは王都から来たんだよね」

「ああ。そろそろ帰らなくちゃな」


 俺たちは今、王都を活動の拠点にしている。

 ケルタスに来たのはセヴリーヌを家に送るため。

 長いしすぎたかもしれない。そろそろ王都に帰らないと。


「ちょっと残念ですね、アッシュさま。サンブロスのラジオが聞けなくなると」


 プリシラがそう言うと、ケイとイリスはそのセリフを待ってましたとばかりに彼女に顔を接近させた。


「そう思ってくれるのかい!?」

「ひゃっ! は、はい……」

「実はね、王都でもラジオが聞ける方法があるんだよ」

「そうなんですか!?」

「アンテナさえあればね」


 兄妹が言うに、ラジオは電波という見えざる波に音を乗せて、アンテナという受信機に送信する仕組みだという。

 いつの間にやらケルタス中に設置されていた街灯もどきには、音を発するほかにアンテナとしての役目もあるのであった。

 つまり、アンテナを設置すればラジオを聴けるようになるのだ。


「その電波というのは、海を越えて王都まで届きますの?」

「ああ。たぶんね」


 すごい。


「私たちはね、王都の人たちにもラジオを聴いてもらいたいの」


 それだけではなかった。

 ゆくゆくはサンブロス以外の人たちもラジオを放送してもらいたい。

 そしてラジオの文化を現代によみがえらせたいのだと兄妹は言ったのだった。


「アッシュさん。どうか国王陛下に掛け合って、王都でラジオを流す許可を取ってもらえないかしら」

「キミたち確か、王女さまと仲がいいんだよね。お願いするにはうってつけだ」

「国の許可を得て、アンテナを設置すればいいってことか?」

「そうなるわね」

「それと、王都のラジオ塔の起動も。これはちょっと大変だけど」

「王都にもケイたちの住んでるのと同じ塔がありますの?」

「古代文明の遺跡があるのなら、ラジオ塔もあるはずだよ。俺たちの住処よりかは規模は小さい可能性はあるけど、ないはずはないと思う」


 ラジオ放送の許可。

 ラジオ塔の起動。

 この二つが俺たちの役目か。


「おまかせくださいっ。このプリシラ、必ず役目を果たしてみせますっ」


 胸を張ったプリシラだが、俺と目が合うと慌てて首を振った。


「も、もうしわけありません、アッシュさま! メイドが出すぎたまねをしました……。こういうのはアッシュさまが決定すべきですよね……」

「プリシラはメイドだけど、俺とは対等な関係の仲間だろ? それに俺もプリシラと同じ気持ちだ」


 そしてマリアもスセリも。

 二人の表情からも兄妹のお願いを受ける気持ちなのが読み取れていた。

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