102-1
ラジオも中盤に入り、楽曲を流す時間。
「今回はこんな曲を用意しました。お楽しみください」
イリスが機械のスイッチを押す。
すると音楽が鳴り始めた。
しっとりと、そしてゆっくりとした歌が流れている。
心が洗われるような清らかな歌だ。
古代文明の言語らしく歌詞は理解できなかったが、聞く者の心を癒してくれた。
ここからではわからないが、ケルタスの人たちも聞き入っているだろう。
プリシラもマリアもうっとりとしていた。
スセリすら満足げだ。
歌が終わると、次は投稿者の手紙を読む時間になった。
サンブロスのもとにはケルタスの住人からの手紙が山ほど届いていた。
さすがに全部は読めないから、兄妹選りすぐりのものを読み上げた。
最初の一通目は恋の悩み。
「ふむふむ、幼馴染になかなか告白する勇気が出ない、と」
「勇気を振り絞って告白するんだ!」
「もう、ケイったら」
役に立ちそうにないアドバイスをするケイにぷんすか怒るイリス。
「そうね……。告白を成功させるには雰囲気が大事ね。二人で街を歩いておいしいものを食べたり公園で遊んだりして楽しい時間を作って、最後の告白すればきっと成功するわ」
イリスが兄に代わって具体的なアドバイスをする。
「手紙の内容を読む限りでは、二人は仲がいいのでしょう? きっと成功するわ。がんばって」
「がんばってくださいまし」
「がんばってください!」
マリアとプリシラも応援した。
「では、続いてのお便りはこちら。えーと、ペンネームは……、セヴリーヌちゃん」
セヴリーヌ!?
ペンネームっていうか本名じゃないか。
「手紙の内容は……、人間関係だね」
人間関係……?
あのセヴリーヌからは連想できない言葉が出てきた。
「読み上げるね。――アタシには嫌いなヤツがいる。嫌いなヤツなんだけど、きっと嫌いでい続けたらダメなんだとも思っている。どうすればいいか教えろ――とのこと」
「あやつ……」
スセリが困った表情をする。
「人間関係って難しいよね」
腕組みして、しきりうなずくケイ。
「『好き』と『嫌い』ふたつにきれいに分けられるわけじゃないもんね。でも、俺に言わせれば、セヴリーヌちゃんが『嫌い』とは言い切れない思っているなら、それは限りなく『好き』に近いんだと思う」
「いきなり好きになるのは難しいから、少しずつセヴリーヌちゃんから歩み寄ってはどうかしら。そうすれば相手も理解してくれるはずよ」
俺は視線をスセリに向ける。
彼女は苦笑しつつ肩をすくめていた。
――あやつも不器用じゃのう。
そう言いたげだった。




