10-7
あたたかな光に包まれる。
痛みが急速に和らいでいく。
心地よさすら感じる。
「アッシュさまの傷が!」
出血していた肩の傷がみるみるふさがっていく。
それから三つも数えぬうちに、矢で射られた傷は跡形もなく消えてなくなった。
光が収まると、俺の傷は完全に癒えていた。
「アッシュさまあっ」
プリシラが俺の胸に飛び込んでくる。
俺の胸の中で彼女は鼻をすすりながら泣きじゃくった。
「ぐす……よかったです……。アッシュさまが無事で本当によかったです……」
「心配かけたな、プリシラ」
俺は彼女の頭をなでた。
頭のてっぺんに生える二つの獣耳ごと。
「アッシュさん」
ディアが胸に手を当てて言う。
「身をていしてわたくしをかばっていただき、ありがとうございます。アッシュさんは命の恩人です」
「礼ならいいさ。俺たちは仲間なんだから、助け合うのは当たり前だ」
「仲間……」
「違うか? 俺はそう思ってるんだが」
「……いえっ」
ディアは笑みを浮かべて首を横に振った。
「このご恩、必ずお返しいたします」
「そんなの別にいらないさ」
「いえ、そうしなければわたくしの気がすみません」
そうだな……。
俺は少し考える。
それからこう言った。
「なら、またディアの水着姿を見たいな」
「お安い御用で……って、ええっ!? 水着ですか!?」
「冗談だよ」
「ア、アッシュさん……もうっ」
ディアは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
よほど水着の件が恥ずかしかったのか、俺の冗談に彼女はふてくされてしまった。
「まったく、のんきじゃのう」
スセリが「やれやれ」と肩をすくめる。
……と、そこで気づいた。
スセリの姿がうっすらと消えかかっているのに。
「スセリさまの姿が……」
「前にも言ったが、治癒魔法は超高等魔法。魔力の消耗が激しいのじゃ。しかも、アッシュの傷は重傷じゃったからの。保持していた魔力をほとんど使ってしまった。実体を保っていられるのもここらが限界じゃの」
「ありがとうスセリ。俺を助けてくれて」
「礼ならいらんぞ」
と、さっきの俺のマネをする。
「アッシュ。おぬしはワシの後継者なのじゃ。この程度で死なれては困るのじゃ」
「ははっ、そうか」
「うっかり死んでしもうたら死霊術で無理やり生き返らせるゆえ、せいぜい命を大事にすることじゃな」
おっかないことを言い残してスセリは実体を消して魔書『オーレオール』の中に戻った。
それからディアがうつむき加減に「本当に申し訳ありません」と言う。
「ガルディア家のいざこざに皆さんを巻き込んでしまって」
心底責任を感じている面持ちをしている。
「いや、逆によかったと俺は思うよ」
「よかった、ですか?」
首をかしげるディア。
「俺たちと出会わなければ、ディアはきっとクロノスの暗殺者に殺されていただろうからな」
「そのとおりですよっ、ディアさまっ」
【読者の皆様へのお願い】
『小説家になろう』の機能
『ブックマークに追加』と☆での評価をしていただけるとうれしいです。
現時点で構いませんので
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価をお願いいたします。
執筆活動の大きな励みになります。
よろしくお願いいたします。




