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「私の名前はイリス。サンブロスの妹の方です。以後お見知りおきを」
「そして俺の名前はケイ。サンブロスの兄の方だよ。みなさん、よろしくね」
それから彼らサンブロスの自己紹介が続いた。
兄妹の一家は遺跡調査を生業としていて、彼らもまた、遺跡を調査しているという。
そうしているうちに、兄妹は古代文明にラジオなる文化があるのを知った。
ラジオはいろいろな話題や音楽、情報を音声で発信する文化だという。
それにいたく興味をひかれたケイ・イリス兄妹は『サンブロス』を結成し、ラジオの文化を復活させ、人々にラジオを届けることを目標にしたのだった。
そして今、放送しているこれが記念すべき、そして念願の『サンタイム』の第1回なのだった。
「ケルタスにはつい最近、引っ越してきたんだけど、とってもいいところだねー」
「ええ。天気はいつも快晴で、海もきれいで食事もおいしいです」
「俺が気に入ったのは『夏のクジラ亭』かな。そこは宿屋なんだけど、食堂で出される料理がすっごくおいしいんだ!」
「ケルタスのみなさんはご存じかもしれませんが、私たちのオススメの宿ですよ」
「我らサンブロスの両親は遺跡の調査にすっかり心を奪われててね、親らしいことはろくにしてもらえなかったんだ。料理もぜんぜんまずくて、食事の時間が憂鬱だったよ」
「ケルタスにはおいしい料理を出すお店がいっぱいありますね。兄妹で自立してケルタスに来てからは、毎日の食事が楽しみなんです」
などなど、雑談がしばらく続く。
気が付くと、人々は立ち止まって興味深げにラジオに聞き入っていた。
俺とスセリも同じく。
「それでは次は音楽の時間。俺たちのおすすめの曲を流していくよ」
「古代文明で流行して歌謡曲を紹介しますね。今日はこの曲!」
音楽が流れだす。
若者が好むような陽気な音楽だ。
そして女性が歌うのは恋の歌。
おしゃれな歌だな。
しばらくして歌が終わる。
「次回からはケルタスのみなさんのリクエストにもお応えするから、じゃんじゃんお手紙ちょうだいね」
「お待ちしていますよ」
「次はお悩み相談のコーナー! 今日は第1回目だから、イリスの悩みを聞こうかな」
「私の悩みは、ピーマンが苦手で食べられないことなんです」
「そういうときは目を閉じて鼻をつまみながら食べるといいよ。味覚ってのは実は、視覚と嗅覚も影響しているからね」
「そうなの? ケイ。今度試してみるわ」
それからもサンブロスのラジオ『サンタイム』はの雑談は続いた。
そして最後に。
「次回からはケルタスのみなさんのお悩みや自慢、お店の宣伝なども募集するよ。お手紙よろしくねっ。あて先は最近できたあの塔だよ。一目見ればわかるから」
「それではまた次回。ごきげんよう」
ラジオはそれで終わった。
黙って聞き入っていた街の人たちはワイワイ話しだした。
「ラジオだって! なんか知らんが面白かったな!」
「あの塔の正体はラジオの塔だったんだねー」
「俺たちの手紙も読んでくれるみたいだな。出してみようかな」
「僕も僕も!」
サンブロスのラジオはケルタスの人々に好意的に受け取られたようだった。




